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“アイスアリーナ”は、建物の中にスケートリンクや観客席を備えたもので、特殊な要素も在ることから建設費も嵩み、維持費も要する訳ですから、「人口20万人程度で、“商圏”と考えられる周辺を含めて30万人程度」という地域に、そんなものが2箇所も相次いで登場したのには驚かされました。
2箇所のアイスアリーナには、各々を本拠地とするアイスホッケーチームが在って、各々のリーグに参加して活動しています。各国のアイスホッケーリーグは、概ね9月や10月からシーズンが始まって、越年した2月下旬や3月から、場合によって4月頃までがシーズンです。9月上旬のこの時季、サハリンでは2つのチームが参加する各リーグのシーズンが始まったところで、「地元開幕戦」が少し話題になっていました。
市街の南東寄り、ゴーリキー通に『クリスタル』という新しいアイスアリーナが在ります。辺りは、比較的新しいように見受けられる高層住宅が目立ち、そうした高層住宅を建設している様子も見える地区です。
この『クリスタル』を本拠地としているチームが<サハリン>です。<サハリン>が参加しているリーグは「アジアアイスホッケーリーグ」です。
「アジアアイスホッケーリーグ」は、「参加国地域におけるアイスホッケーの発展および国際競技力の向上と民族・文化・経済の交流を促進し、参加国間の相互理解を深める」ことを目的に設立され、2003-04シーズンからリーグ戦を行っています。
<サハリン>はこの「アジアアイスホッケーリーグ」に昨年、2014-15シーズンから参戦しています。昨シーズンは“デビュー”ながらも3位と大健闘を見せました。
2015-16シーズンは、日本4チーム(王子イーグルス、日本製紙クレインズ、日光アイスバックス、東北フリーブレイズ)、韓国3チーム(デミョンサンム、ハイワン、アニャンハルラ)、中国1チーム(チャイナドラゴン)、ロシア1チーム(サハリン)の9チームが参加しています。
9月7日に『クリスタル』へ足を運んでみました。周辺の判り易い辺りに路線バスが見付けられず、タクシーや徒歩で往来することになりました。
『クリスタル』の建物の下は屋根が着いた駐車場になっていて、試合を観戦する人達が車でどんどんやって来ていました。他方、建物の前には舗装された広場が在り、バスケットボールのゴールも据えられ、子ども達や若者達がバスケットボールをしたり、ローラースケートをやっている様子が見られました。
午後7時のフェイスオフ(試合開始)を前に、傾いた夕陽の光を浴びて輝く『クリスタル』の入口に近付いてみれば、「開幕シリーズ無料開放」ということを実施中であることが判りました。警備員(どうしたものか、サハリンでは何処へ行っても、警備員は黒い作業服風のユニフォームを着ている。)が居て、空港の保安検査のようなゲートが設けられた入口から場内に入りました。
アイスホッケーの試合を観戦する場合、氷のリンクの傍らに設けられた客席に入ることから、「妙に寒い」感じがする場合も在るのですが、この『クリスタル』はそういうこともなく、20℃前後の気温のこの日に戸外を動き回っていた服装で抵抗感は無い感じでした。
試合前に両チームの選手達が姿を見せてウォーミングアップの後、リンク整備が入り、フェイスオフを前に場内の照明が落とされます。スポットライトが灯される中、<日本製紙クレインズ>の先発選手の背番号と氏名がアナウンスされ、他の選手がリンク上に登場します。そして、歓声が高まる中で<サハリン>の先発選手の背番号と氏名がアナウンスされます。一際歓声が高まったのは、チームのキャプテンで、大ベテランのフォワード、背番号77ルスラン・ベルニコフ選手が登場した場面でした。やがて<サハリン>の先発以外の各選手もリンク上に登場し、両チーム各々に一列に整列して、会場に掲げられたリーグ参加チームの4国の国旗が掲げられた方を向きます。観客も起立して、日本国歌、ロシア国歌の演奏が流れました。
<日本製紙クレインズ>の応援団は見受けられませんでしたが、<サハリン>の側は“公認応援団”なのか関係者なのか判然としませんでしたが太鼓が華々しく打ち鳴らされ、着ぐるみのキャラクターやチアガールも登場し、なかなかに華やかな雰囲気の中で試合が催されました。
“日本リーグ時代”からの永い伝統を誇る<日本製紙クレインズ>と、“アイスホッケー大国”であるロシアの伝統を受継ぐ<サハリン>の対戦は、なかなかに見応えが在るものでした。9月7日の試合は、<サハリン>が第1ピリオドに先制点を挙げましたが、第2ピリオドに<日本製紙クレインズ>が3得点しました。1対3で推移した第3ピリオドの終盤、「残念だな…」と帰り始めるファンが見受けられ始め、終了も間際になった辺りで<サハリン>は得点を挙げました。結果、2対3で<サハリン>は敗れてしまいました。
<サハリン>の本拠地である『クリスタル』は“多目的ホール”です。アイスホッケーの試合が催された場所を、他の催事にも利用出来るのです。
<サハリン>の運営ですが、極東では類例が少ないものの、ロシア国内や欧州諸国では時々見受けられる「複数競技のプロチームを擁するクラブ」という方式です。<サハリン>は、アイスホッケーのチームの他、バスケットボールのチーム、女子バレーボールのチームを擁するクラブです。
アイスホッケーの試合には、アイスホッケーのユニフォームを着たマスコットの着ぐるみの他に、サハリンの地域コードである“65”という背番号のバスケットボールのユニフォームを着たマスコットの着ぐるみも登場していましたが、これも同一運営体のチームであるが故なのでしょう。
今年になって、サハリン州政府の発案で「プロのバスケットボールチームを起こして、国内リーグに参戦」ということになり、体制が整えられたということのようです。女子バレーボールチームは2012年から活動を続けており、昨年から「アジアアイスホッケーリーグ」に参加しているチームと併せて<サハリン>ということになりました。レベルの高いリーグに参加するスポーツチームを擁する地域となることで、地域のスポーツや文化の振興を図ると同時に、「地元への矜持」を高めたいという意図のようです。
アイスホッケーに関しては、日本国内では競技人口がやや限られる感で、試合の開催頻度も少し低めなのかもしれませんが、“トップリーグ”が「国際的な体制」になっているのは少し独特で興味深いことです。そして、北海道内を本拠地とするチームを含む日本のチームが、隣接する地域であるサハリンを訪ねて試合を行い、同時に彼らを国内各地に迎えて試合を開催しているというのも興味が湧きます。
企画総務部交流推進課
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