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ユジノサハリンスクからコルサコフへ車で南下すると、コルサコフ市の部分に入る辺りに港町を象徴する錨のオブジェが据えられた“КОРСАКОВ”(コルサコフ)の看板が迎えてくれます。
稚内からのフェリーが到着するコルサコフ港を擁するコルサコフ市は、1991年以来の友好都市ですが、稚泊航路(ちはくこうろ)の歴史も在る、稚内とは大変に縁が深い街です。
そして、市内を歩いてみると、存外居心地の良い街でもあります。
コルサコフ市の近郊、プリゴロドノエには大きな液化天然ガス(LNG)工場があります。サハリン北部の天然ガスがパイプラインで送り込まれ、ここで液化され、各地の需要家の所へ積み出されています。日本の大都市圏で活動する都市ガス会社、電力会社もここの顧客です。既にここのガスが送られ始めています。もしかすると、既にサハリンからのガスを御家庭で御利用になった方もいらっしゃるかもしれません。
フェリー<アインス宗谷>の船上から、このプリゴロドノエのLNG工場を望むことが出来ます。稚内からコルサコフへ向う場合は、「進行方向右側」に見えます。コルサコフから稚内の場合は「後方」です。写真を撮りたい方は、望遠が利くタイプのカメラがあれば便利です。
工場の大きな施設の周囲に、大きな専用容器を備えたLNG運搬専用船が航行していたり、停泊している様子が見えます。
写真では大きな煙突の上に豪快な焔が出ていますが、これは現在は一部の機器の試運転を行っている部分があるためで、通常はここまで激しくはないそうです。
コルサコフ市内には港を一望出来る高台が在ります。LNG工場の煙突から、焔が勢い良く出ている場合、その高台から見えて驚く場合もあります。
港を一望出来る高台ですが、コルサコフが“大泊”(おおどまり)と呼ばれていた1925年、当時の皇太子殿下(後の昭和天皇)が樺太訪問の際に立ち寄ったことが伝えられています。
写真奥の“南埠頭”は樺太時代から貨客船が発着していた場所で、稚内からの船も到着していました。往時は線路が敷かれていて、到着する船の乗客のために客車が待機して、そのまま当時は“豊原”(とよはら)と呼ばれていたユジノサハリンスク方面へ列車で移動したそうです。
写真手前は“中央港区”です。ここは主に漁船が利用する場所とのことです。
写真はコルサコフ港では最も新しい“北埠頭”です。ここは最も深い岸壁で、大型貨物船、軍艦等が利用します。
大陸との物資の往来が在るため、ウラジオストク方面に本社を構える船会社のマークが入ったコンテナが多く積上げられているのが見えます。
コルサコフ港には荷役作業で使用するクレーンが設置されていますが、新旧様々な形式のものが見受けられます。中には「DDR製造」というものも見受けられ、歴史に想いを巡らせてしまいます。“DDR”とは“東ドイツ”のことです。(尚、とくに許可を得なければクレーンの傍には立ち入ることが出来ません。)
コルサコフ市内には郷土博物館が在ります。郷土の歴史を伝える展示や、写真展等に利用される展示室を備えた小さな施設です。
コルサコフでは、1853年にロシアの砦が築かれたことを“建都”と捉えていますが、博物館の展示ではサハリン近海の探検の歴史も紹介されており、日本の間宮林蔵の探検のことも展示されていました。
コルサコフ周辺は、実はロシアの砦が築かれる以前に“クシュンコタン”と呼ばれていて、アイヌ人や日本人が活動していました。そのアイヌ人達のことも紹介されています。
またサハリンでは、『サハリン島』を著した作家チェーホフが来訪したことが有名ですが、彼はコルサコフにも足跡を残しています。チェーホフはサハリンの北側で活動した後、日本海側を船で南下し、海からコルサコフに上陸しました。
小さな博物館ではあるものの、昔の生活道具なども展示されており、意外に面白い場所です。“大泊”時代の生活道具は「日本のこの種の資料館でも見掛ける」というものが多く在ります。
ここに旧い徳利と猪口が在り、館の方に尋ねたところ、“大泊”の時代には日本酒の醸造所が在ったそうです。館の方は、日本酒の徳利を見た時「不思議な花瓶?」と思ったそうです。確かに徳利は“花瓶”と考えると、口が小さ過ぎ、“一輪挿し”にしても背が低すぎる感じです。
現在のコルサコフには、日本酒を醸造している所は在りませんが、飲料メーカーが立地しています。“コルサーコフスカヤ”(コルサコフの形容詞)というミネラルウォーターや、“クワス”というロシア独特な飲料が、コルサコフ市内の他、ユジノサハリンスク等でも売られています。
何か、新しくデザインしたのか、或いは昔風なのか、“クワス”のペットボトルには独特なデザインのラベルが貼られています。
因みに“クワス”は、「黒ビールを甘くした?」ような不思議な味がする飲物です。飲物として愉しむ他、これを利用したスープもあるそうです。
コルサコフではビールを醸造し、醸造されたビールが飲める場所も在ります。オーストリアの企業と、ロシア企業の合弁で運営されているとのことです。
軽い感じのビールから、ずっしりした感じのものや、黒ビールまで4種類の味が用意されています。小(300ミリリットル)、大(600ミリリットル)と好みの量を注文することが出来ます。
気候が良い時季には、戸外にテーブルや椅子を据えて愉しむことも出来るようです。コルサコフは、稚内同様の海岸部に位置する街ですが、稚内に比べると「湾の深奥部」に相当する場所に在ることから、「稚内ほどには風が強くない」という感じがします。戸外でビールを愉しむことが出来る日も多いのでしょう。5月末には、未だ空気が冷えている感じでしたが、6月から8月、場合によって9月頃が戸外活動にも良さそうな時季です。
コルサコフは、サハリンへ行かれる方の中では「到着して出発するだけ」という方も多いようですが、市内には存外美味しいレストランも散見しますから、ここで食事の機会を設けるのも良いかもしれません。
サハリンを訪ねる場合、「ロシア流の美味しいスープ」というのは一寸したお楽しみです。写真右側はボルシチです。
色々な料理が在りますが、何となく興味深いのは「北海道でも御馴染みな食材が、サハリンではどういう具合に供されるのか?」という点です。写真左側のように、コルサコフのレストランで鮭が出て来ました。完全に“本格洋食”の魚料理風の姿で登場しました。鮭の脇に在るサワークリームを付けて頂くようになっています。稚内で親しまれている鮭に比べると「もう少し塩味が効いていてもよくないか?」という気がしないでもありませんが。
この種の料理が登場すると、皿の脇に付け合せの野菜が在りますが、そういうものの中に「存外美味しい!!」というものも見受けられます。
以上、5月26日に行われた「稚内・コルサコフ定期航路利用促進合同会議」に関連して、事前準備から本番まで、何度も御邪魔したコルサコフの様子でした。一度是非訪ねてみてください。
企画総務部交流推進課
稚内市中央3丁目13番15号
交流推進グループ 0162-23-6486(直通)
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