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第52次日本南極地域観測隊 市川正和隊員の南極越冬記(4)

平成23年5月の報告


第52次日本南極地域観測隊ロゴ

 1. 夏日課から冬日課に変わる

 2. イベント【スポーツ大会「流鏑馬(やぶさめ)」】

 3. 久しぶりのオーロラとプランクトン採取オペレーション

 4. 南極大学

 5. 情報発信

 6. 極夜(きょくや)

夏日課から冬日課に変わる

 4月最後のブリザードの影響が残り、冬日課に変わった初日の5月1日は吹雪で外出制限がかかっていました。

 越冬隊は夏期間と冬期間の日課が少しだけ変わります。

昭和基地に入ってから4月末までは夏日課、その後5月1日から9月30日までの冬日課を挟んで10月1日からまた夏日課に戻ります。

 夏日課は朝食が7時から始まり8時から17時までの業務時間で週休は1日、日曜日のみ休日となります。

 冬日課は朝食と就業開始時間が1時間遅くなり、8時朝食、9時から17時が業務時間です。休日は週休2日となり、少しのんびり出来るようになります。

 これまでも何故か休日の天候が悪く、各イベントの他に休日を外で楽しもうと計画した人たちは残念な結果になることが多かったのですが、5月初日の日曜日も吹雪でした。

 吹雪が去った後は除雪作業です。機械部門の隊員を中心に明るい時間は除雪に追われます。

イベント【(スポーツ大会「流鏑馬(やぶさめ)」】

 5月2週目の休日は2日間は、ともなんとか吹雪かず、土曜日はスポーツ大会、日曜日は釣り遠足のイベントが開催できました。

 ほぼ毎月行われるスポーツ大会ですが、今月は流鏑馬(やぶさめ)でした。

 馬の代わりに荷物運搬用の重機を使い、弓、矢、的、重機の飾り付けすべて手作りです。

スポーツ大会「流鏑馬(やぶさめ)」終了後の記念撮影【真中で弓を構えている(黒い防寒着)のが市川隊員】

今月のスポーツ大会「流鏑馬(やぶさめ)」終了後の記念写真

【真中で弓を構えている(黒い防寒着)のが市川隊員】

 私の成績はというと、的にあたったものの点数が足りず優勝は逃しましたが楽しい時間でした。

 翌日の釣り遠足は、通信ワッチ業務で欠席でした。

(庶務業務の他に週に1~2回ですが通信ワッチ業務があります。通信担当隊員は一人ですので休日がありませんので、隊長と私が交代で入る日があります。観測隊は基本的に一人部門が多いため、お互い協力しあって生活しています。)

久しぶりのオーロラとプランクトン採取オペレーション

 4月はあまり見ることのできなかったオーロラが久しぶりに激しく現れました。

オーロラ【5月10日撮影】
オーロラ【5月10日撮影】

 5月8日と10日でしたが、3月に見た頃よりも気温が下がっているため、長時間見ていることは厳しいですが、カメラ任せで連続写真を撮影しました。帰ったらお見せできると思います。

 5月上旬は天気が良く外で予定されていた作業は順調に進みました。

 私がメンバーに入っていたのはプランクトン採取オペレーションです。

 

 極地研究所の事業の一つに中高生南極北極科学コンテストというものがあり、そのコンテストで最優秀賞に選ばれた課題について昭和基地で実施、検証するというものの一つです。

 この課題は山口県の中学1年生から寄せられたもので、地元で実際やってみたときの目的、方法、結果、考察があり、南極で実験する時の手法(道具から手順まで)や予想される結果まで考えられています。

 

 稚内の皆さんも応募してみたらいかがでしょうか。詳しくは極地研究所のホームページをご覧ください。

 採取場所の選定のため、氷厚を測りに行き、後日あらためて採取オペレーションを実施しました。

氷厚調査【一番右が市川隊員】

氷厚調査

【一番右が市川隊員】

 残念ながら今回のオペレーションではプランクトンは採取できませんでしたが、今後も継続的に行う予定です。

 昭和基地周辺の海には色々なプランクトンやそれを餌とするナンキョクオキアミなどの小生物、また、そのオキアミを食べるペンギンやアザラシなど色々な生物が生息しています。

 

 ナンキョクオキアミは南氷洋にしか生息していませんが、釣りの餌や加工品の材料として日本でも利用されています。

 現在の昭和基地周辺の海は厚い氷に閉ざされてしまい、夏の間、出会うことが出来たペンギンやアザラシを見かけることがなくなりました。しかし、冷たく厚い氷の下にはまだまだ色々な生物がいます。水中撮影が可能なカメラを持ってきた隊員がいるので、極夜(きょくや)明けには一緒に撮影し、稚内に帰った時には皆さんにご紹介できればなぁと思っています。

南極大学

 越冬生活がスタートして3カ月が過ぎ、毎年、この時期から始まる南極大学という事業が今年も昭和基地で始まりました。

 全員が講師となり、皆に自分が紹介したい内容を30分で伝えるというものです。

学びの場でもあり、伝える訓練の場でもあります。

 開講式が行われた5月16日、いきなり私の番でした。

 「わがまち、わが仲間」と題して稚内の紹介、市役所の皆さん、そして、私を応援していただいた皆さんの紹介をさせていただきました。

 30分では伝えきれないので、2回目は現地でさせていただきますと終わりましたが、本気で行きたいと思ってくれた仲間が結構いましたね。

 さすが最北端です。

 とにかく、稚内に行ってみたいと思ってもらえて良かったです。

情報発信

 私の日常業務の中でそれなりのウエイトを持っているものとして「情報発信」というものがあります。

 雑誌や新聞への寄稿、極地研ホームページ掲載の「昭和基地NOW」の原稿送信、そして日本の各地へTV会議システムを使って行われる「南極教室」です。

 原稿はすべて私が書くという訳ではなく、他の隊員に依頼するのですが、その原稿の取りまとめやチェック作業にはそれなりの時間を要します。

 自分で書くときはもっとかかりますが…。

 昭和基地NOWの原稿は基本的に私の業務なのですが、内容が偏らないように、他の隊員にもお願いして毎週更新しています。是非ご覧ください。

 この情報発信の中でも1番のイベント的業務が南極教室です。

 各隊員の母校や子息さんが通っている学校と回線を結び、45分という短い時間ですが、南極の魅力や観測隊の紹介を行います。

 基本的にメインキャスターとなるのは各隊員ですが、その内容や時間配分のチェック、カメラなどスタッフの動きの確認等、1回の本番毎に3~5回のリハーサルを行います。

 52次隊全体としては、このイベントが30回程度ありますので、これから11月までの間に行われるリハーサルと本番を合わせると100~150回行うことになります。

 どこの学校の本番に誰が出演して何処で中継するのか、これだけ数があると混乱することも増えますが、南極教室スタッフは皆協力し、さらにスタッフを募集しながらなんとかやっています。

 稚内とも7月21日に南中学校と交信させていただきますし、8月6日には南極樺太犬を偲ぶ子ども会フェスティバルで皆さんとお会いできる予定です。

極夜(きょくや)

 毎回、広報紙では太陽を見ることのできる時間が短くなってきましたとご紹介していましたが、5月31日、いよいよ昇らなくなりました。

 極夜です。

 この極夜というのは、南極圏と北極圏のような高緯度(66度以上)の場所で起こる現象で、地軸が傾いている地球の一部分で太陽が見えなくなるという現象です。

 昭和基地に入った頃は逆の白夜でしたが、いよいよ極夜(きょくや)初体験です。

 5月下旬は天候が悪く、最後に太陽を見ることができたのは23日でしたが、一応その後も日の出と日の入りの時間はありました。

5月23日 最後に見た太陽
5月23日 最後に見た太陽

 5月30日12時48分、最後の太陽が沈みました。

 次に太陽が出るのは7月13日12時11分です。

 これからの約1ヶ月半は太陽を見ることがありません。

 極夜というと1日中真っ暗と思われるのではないでしょうか?

極夜(きょくや)午後1時の様子
          午後1時頃の様子

          【下はアンテナドーム】

 私もそんなイメージでした。しかし、日中の2~3時間くら

いは明るさを感じますし、天気が良い時は朝焼けも見られます。

 今回はまだくっきりとしたものは見えていませんが、気温が下がると見えないはずの太陽が見える時もあるんです。

 蜃気楼(しんきろう)ですね。

蜃気楼(しんきろう)
蜃気楼(しんきろう)【太陽が昇りかけているように見える】

 蜃気楼の写真は、難しくてうまく伝えられないと思いますが、帰るまでにはなんとか上手に撮影できるよう頑張りますね。


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