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第46次南極地域観測隊 近江隊員の南極滞在記(2005年10月分)

10月1日(土)

(天候:曇一時雪・最大瞬間風速:5.8m/s・気温(最高:-18.6℃ 最低:-27.5℃)(日出5:28 日入18:57))

 いよいよ10月に突入です。昨年の12月18日に昭和基地に来て以来、約10ヶ月があっという間に過ぎてしまったというのが実感です。今月は、ドーム旅行隊の出発も残すところ3週間後に控えています。ドーム旅行隊のメンバーは今日から4日間、とっつき岬に置いてある中継拠点旅行に使用したSM100型の大型雪上車3台の整備とS16地点に燃料を運ぶ作業を行うために出発していきました。その後もS16地点へ出発直前まで燃料、物資輸送を行い出発の準備を整えるのです。
 また、メンバーは昭和基地を出発し、来年の1月末までドームふじ基地で作業をします。ですから、昭和基地の個人の荷物を全て整理し梱包しなければなりません。これも残り限られた昭和基地での滞在時間の合間をぬってしなければなりませんので、ドーム旅行隊メンバーにとっては寝る間を惜しんでまで準備しなければならないのです。昭和基地での生活も残りわずかとなり、ほとんどのメンバーが再び昭和基地へは来ることが無いと思いますので、これから出発するまでの間の基地での生活全てを有意義にそして楽しんでいくことでしょう。
 さて、昭和基地では病気はしないと思っていたのですが、ある隊員が38.2度の高熱を出し、お腹の具合も悪くなって1日寝込んでしまったのです。と思いきや私も少し悪寒がしてきて、お腹の具合も何やらおかしくなってきています。症状はほとんど一緒で微熱が・・・ひょっとすると昨日のBARが原因?その隊員もBARに長時間居たらしいということなので、もしかすると風邪?いずれにしても体の中の抵抗力が弱まっている状態なので、体調管理も気をつけなければと思います。
 さてさて、みずほMT探査旅行隊ですが、天候は晴、気温マイナス30.8℃、風11m/sのまずまずの条件の中、今日も次の観測ポイントH184に到着(走行距離58km)観測装置をセットし観測開始。人員、車両等異常無しということで頑張っているとのことです。
 もう一つのとっつき岬で車両整備を行なった後、そのままとっつき岬に残るメンバーとS16地点に燃料を運ぶメンバー二手に分かれて作業をしたそうです。どちらもそれぞれのところで作業を行ったそうです。どちらも頑張ってください!!

10月2日(日)

(天候:吹雪一時雪・最大瞬間風速:23.7m/s・気温(最高:-8.2℃ 最低:-21.6℃)(日出5:24 日入19:00))

 本日、同時に2名の隊員が誕生日を迎えました。一人は医療隊員、一人はFA(フィールドアシスタント)担当隊員。お二人の隊員の身分証明用写真と今現在の顔を比較して見ますと、格段にいい顔になっています。南極に来て約10ヶ月の間に経験、体感してきたことが自然と顔の表情に自信となって表れているのではと思います。この二人だけではなく越冬隊員全員がいい顔になってきています。越冬終了直前はもっともっといい顔になっていることでしょう。でも、日本に帰って時間が経過すると、元の顔に戻ってしまうのでしょうかね・・・
 さてさて、みずほMT探査旅行隊ですが、天候は地吹雪、気温マイナス21.7℃、風12m/s、視程100m。H184地点を出発し、HM128地点(走行距離60㎞)に到着。この時点ですでに視程が100~200mという状況で、観測は出来ず、様子をみることにしたそうですが、結局回復しなかったそうです。しばらく順調に観測が出来る好天が続いていましたので、周期的には悪天になる時期でしたのでしょうがありません。天候には勝てませんから・・・
 もう一つのとっつき岬、S16地点のチームですが、こちらも悪天で視程が100m程度しかなく、外作業は出来ず、燃料の移動は取りやめになったそうです。明日以降天候が危ぶまれている予報になっていますので、帰るタイミングを計算しているそうです。

10月3日(月)

(天候:曇一時雪・最大瞬間風速:20.8m/s・気温(最高:-6.5℃ 最低:-10.9℃)(日出5:19 日入19:04))

 今日、14時から、冷凍庫、冷蔵庫の整理作業が手空き総員で行われました。これはドーム旅行隊が中旬に出発しますので、その冷凍食材の準備と公用氷を採取するオペレーションが今月中に計画されており、その保管スペースの確保の理由によって行なわれたのです。
 昭和基地には大きな冷凍庫が2箇所にあります。一つは倉庫棟2階に。これは主に46次隊が持込んだ食材を中心に入れておくもので、もう一つは発電棟1階にあります。これは主に予備食(前次隊が次隊の為に持込んでいる)を保管しておくところです。
 まず、この発電棟の冷凍庫(2つ隣り合わせになっている)の一方をほとんど空っぽにしなければなりませんので、全てのものを運び出します。隣のもう一つの冷凍庫に移動するもの、倉庫棟の冷凍庫に移動するものを調理隊員の指示によって移動します。冷凍庫の中はマイナス20℃、冷凍庫の外にでると発電機がすぐそばにありますので、30度以上の温度があり、なんと寒暖の差が50度。冷凍庫の中に入って作業する隊員は上下羽毛服、外で荷物を運び出す隊員はTシャツで汗だくで行っていました。
 この冷凍庫から運び出された食材は一路、倉庫棟冷凍庫へと運ばれます。といっても全て人力作業。手押し車に7~8個を積み込み移動しますが、発電棟から倉庫棟までの距離は50m程度ですが、通路がかなりの登り傾斜となっており、一気に押し切らないと止まってしまうようなくらいの坂道です。この手押し車、4~5台で人力で運搬していますがこちらの担当隊員も汗だくです。倉庫棟2階の冷凍庫前はみるみるうちに冷凍食材の山・・・これをできるだけ種類と同じ大きさの箱を揃えながら入れていきます。倉庫棟冷凍庫もみるみるスペースが埋まっていき最後は通路まで食材が置かれており、何とか全ての物が納まったのでした。作業を手伝った皆さん、お疲れ様でした。

配送風景写真その1
配送風景写真その2
(汗だくになりながらの運搬です。でも、笑顔を忘れません)

 11時半過ぎにとっつき岬、S16方面の旅行隊が明日以降の天候の崩れを見越し、1日前倒しではありますが基地に帰着しました。とっつき岬での雪上車の整備、通信機器の点検はある程度完了したのですが、燃料ドラムの輸送は悪天候による視程不良のため半分程度残してきたそうです。この残りはまた日を改めて近々に行なわれるということですが、こちらもドーム旅行隊出発までの作業が目白押しになっています。
 ここ最近、作業棟下のタイドクラックの幅が大きくなってきています。これは潮の満ち引きによって起きる動きと思われます。最近、昭和基地より西側に位置する(南極では比較的暖かい場所で各国の基地もたくさんあります)キングジョージ島でチリ隊2名、南極半島でアルゼンチン隊3名がクレバスに落ちて亡くなったという事故が相次ぎました。しばらくこのような死亡事故は報告されていなっかったのですけれど・・・。私たちも安全をきしてルート工作をしてはいますが、ルートのすぐそばにクラック、クレバスがもしかするとあるかもしれませんので、細心の注意をはらわなければなりません。なんとしてでも37名が全員無事に元気で日本に帰国することが、昭和基地で観測や基地の維持管理をすることと同じくらいの大切な任務なのです。(ある意味ではこれが一番重要だと思います)
 さてさて、みずほMT探査旅行隊ですが、本日は悪天による視程不良による停滞をしたそうです。天候は回復に向っているそうなので、明日には観測が再開できる見込みです。今日は辛抱の1日でした。

10月4日(火)

(天候:曇後一時雪・最大瞬間風速:20.8m/s・気温(最高:-10.6℃ 最低:-14.9℃)(日出5:15 日入19:08))

 10月に入り多くの野外活動が行われていますが、一番多く観測に出かける予定になっているのが地学部門です。すでに現在みずほMT探査旅行隊も地学部門ですし、今日、ラングホブデの雪鳥沢方面に出発した地下水湧出量観測(今回は設置)も地学部門です。担当者は観測に出かけ、数日で昭和基地に帰着した直後から次の観測の準備に取り掛かり数日後にはまた出発となります。昭和基地でいま一番忙しい地学部門の皆さん、頑張ってください!!

出発風景写真その1
出発風景写真その2
(大忙しの地学隊の出発です)

 また、一日一日とドーム旅行の出発が近づいています。ドーム隊のメンバーも出発までにやらなければならないことがたくさんあり、こちらも毎日がとても忙しそうにしています。10月に入って昭和基地の中が慌ただしくなってきた今日この頃です。私も帰る準備で業務が忙しくなってきており、他人事ではなくなってきているのも事実です。
 さてさて、みずほMT探査旅行隊ですが、本日は天候が回復しようやく観測をすることが出来たそうです。午前中に観測を行い、午後からは2台の雪上車の足回りの整備点検、特にグリスアップを中心に行なったそうです。この雪上車が動かなくなっては何も出来なくなってしまいます。観測、移動、そして食事等止まってしまったことを考えると・・・ですから充分な整備点検を早め早めに行い、故障を未然に防ぐのです。

10月5日(水)

(天候:晴時々雪一時曇・最大瞬間風速:20.8m/s・気温(最高:-14.4℃ 最低:-18.9℃)(日出5:10 日入19:13))

 何やら、今日、休日である通信隊員が食べ物らしきものをこっそり作っているではありませんか。聞くところによるとラムレーズンクッキー?らしく一生懸命に何かを練っていたと思いきや、今度は厨房で手作り豆腐なるものにチャレンジしているではありませんか!この豆腐らしきものは、今週末に開催される居酒屋で披露するらしく、その試作品として作っていたようです。その練習用の豆腐がなんと夕食の食卓に並んでいるではありませんか!見た目はまさに「豆腐」。色といい艶といいまるで本物。出来栄えは?と思い食べてみると初めての試みとしては「合格です」!きっと居酒屋の時は今日の反省点をもとにもっと美味しい素晴らしいものを食べてもらうべく改良を重ねるに違いないと思います。期待しています!!
 さてさて、みずほMT探査旅行隊ですが、天候は曇、気温マイナス31.4℃、風3m/s以下9時に次の観測ポイントであるHM106地点を目指して出発。10時50分到着後、早速観測装置のセットを行ない観測開始。観測中に雪上車の足回りの整備点検(ボルトの増し締め等)が行なわれたそうです。残すところあと4日、気をつけて観測を続けてください。
 また、ラングホブデ雪鳥沢旅行隊も順調に湧出量計の設置が行われたそうです。

10月6日(木)

(天候:雪・最大瞬間風速:9.6m/s・気温(最高:-15.8℃ 最低:-19.9℃)(日出5:06 日入19:16))

 ラングホブデ雪鳥沢旅行隊が、2泊3日往復距離約88kmの旅行から無事に帰着しました。LEルートからハムナ氷ばくまでのルート工作、この周辺の海域への湧出量計設置(2箇所)、海氷GPSの設置と全ての計画していた作業を終了しての帰着です。湧出量計の設置に際しては1.4mの海氷にエンジンアイスドリルで穴を開け、水深は60mと185mのかなり深いところに設置することが出来たそうです。このような観測を数多くのポイントで行うことによってデーターを蓄積しこれに基づいて分析を行ないます。詳細な分析は日本に帰国してからじっくり行なうとして、南極での貴重なデーターを多く日本に送信したり、持ち帰ることがとても重要な業務となっているのです。これまで数回行なわれてきたいろいろなポイントでのデーターはまずまずの観測結果が得られているそうなので、今回も是非、いいデーターが取れることを祈っています。

一生懸命に海氷に穴を開けていますの写真
湧出量計設置完了の写真
(一生懸命に海氷に穴を開けています)
(湧出量計設置完了)

 居住棟のあちらこちらからダンボールに荷物を詰め込み、ガムテープを張ったりして部屋の中を片付ける音が夜遅くまで聞えてきています。そうです。ドーム旅行隊のメンバーが私物の整理を始めているのです。ドーム隊は10月17日(予定)に昭和基地を出発し、ドームふじ基地に滞在し掘削を続け、来年の1月末に業務を終了戻ってきますが、その時は既に越冬交代が行われ47次隊が昭和基地を管理しており、私達46次隊は既にしらせに居住の場所を移しているのです。ですから、今使用している個室もきれいに清掃し明け渡すだけにして出発をしなければなりません。その後片付けで一つ一つの詰め込んでいる物には、昨年の12月18日に昭和基地に到着してからの思い出がぎっしり詰まっているはずです。その荷物を詰め込みながら、昭和基地での思い出を再び思い出していることでしょう。あと出発予定まで11日です。
 さて、みずほMT探査旅行隊ですが、天候は晴、気温マイナス38.8℃、風4m/s。8時45分に観測装置を回収し、次の目的ポイントであるH176地点をめざし出発。12時15分には到着し、早速、観測装置を設置し観測を開始し現在も観測中とのことです。こちらもいよいよ昭和基地へ向うルートに戻り、観測をしながら9日に基地へと戻ってくる予定となっています。あと3日で到着です。

10月7日(金)

(天候:吹雪後雪・最大瞬間風速:24.9m/s・気温(最高:-14.0℃ 最低:-18.4℃)(日出5:02 日入19:20))

 先日、アルゼンチン隊(jubany基地)の2隊員がクレバスに落ちた事故を報告しましたが、アルゼンチンのもう一つの基地(BelgranoII基地)が9月10日午前8時45分頃、居住棟施設で火災が発生し、懸命の消火作業にあたったそうですが激しい煙と風によりほぼ全焼したそうです。この施設は寝室、厨房、浴室、医療施設などが含まれていたそうで、隊員の私物、通信及び救急装備も燃えてしまったそうです。幸い基地の隊員にけが人はいなかったのですが、それにしても基地の主要部が燃えてしまったので、これからが大変かと思います。私たちもこのような火災がいつ何時起こりうるかわかりませんので、このようなことにならぬように日々の点検業務、消火体制の確認と訓練を怠らないようにしていかなければなりません。もしも昭和基地の管理棟、居住棟が全焼してしまったら・・・と考えるだけでも恐ろしいです。でも、アルゼンチン隊は立て続けに事故が・・・これ以上の事故が起こらないことを願っています。
 金曜日の夜といえば、「金曜ロードしょうわ」で担当の係員が毎回いろいろな映画を選択して上映をしてくれています。また、この開催に合わせてソフトクリーム係が美味しい(たまにはオリジナルもあります)ソフトクリームも作りますので、毎回楽しみにしている隊員がたくさんいます。昨日は、ドーム旅行隊が昭和基地に全員おりましたので、この時とばかりにプロジェクトXの第1次隊の出発から越冬隊が苦労の連続で、何とか越冬を終えたという物語が上映されたのです。私も日本にいるとき(出発する直前)に見て過去の大先輩の多くの苦労と熱意などがひしひしと感じられ、自分の出発にあたり気持ちが高まったことを昨日のように思い出しますが、この昭和基地で9ヶ月余り経過して、ここ南極で見てみる、また違った感動を得ることが出来ました。1次隊の大先輩の皆さんの苦労はなおのこと、それ以降の先輩方の一つ一つの積み重ねで今の昭和基地があることを再認識させられたのでした。また、探求する気持ち、チャレンジする気持ちがいかに大切か、そして先ずやってみなければ何も始まらないなど多くの言葉を改めて聞いて、感動を得たのでした。
 ドーム旅行隊のリーダーも見終わって「う~ん・・・」と感動をしていたようでした。またドーム旅行隊の他のメンバーも見ていましたので、出発に際してなお一層気持ちが引き締まったのではと思います。
 この昭和基地では、これだけの施設や環境が整備された現在は、より以上に日本に近い環境にしようと前を見ることばかりになっています。そんな中あえて後ろを振り向き、それも原点まで戻ってみることもとても大事なことではいかと思います。私たちは諸先輩の努力の結晶の上で現在、仕事をしているんだということを心に刻み込んで日々の生活を過ごし、そして47次隊へこの昭和基地を引き渡さなければならないのです。この気持ちを忘れずにしっかりと引継まで維持管理をして行きたいと思います。

現在の昭和基地主要部の写真その1
現在の昭和基地主要部の写真その2
(現在の昭和基地主要部です)

 さて、みずほMT探査旅行隊ですが、天候は地吹雪、気温マイナス25.2℃、風15m/s。強風により若干視程が悪くなっていましたが、8時50分に観測装置を回収し次の目的ポイントであるH122地点をめざし出発。11時45分に到着したものの更に視程が悪化したため終盤になっての手痛い停滞!?を余儀なくされたらしいです。明日の天候回復を見て観測装置の設置、観測を行う予定だそうです。あとほんの少しです!頑張れぇ~

10月8日(土)

(天候:曇一時地吹雪後晴・最大瞬間風速:18.9m/s・気温(最高:-15.9℃ 最低:-27.3℃)(日出4:57 日入19:24))

 今日は、ドーム旅行隊出発前の最後のスポーツ大会(海氷上でキックベースボール)でしたが、天気はまずまずなのでしたが風が10~15mあり、まして海氷上で風を避ける場所も無い中で競技を行なうにしては少し条件が厳しすぎるということで、やむなく中止となりました。ドーム旅行隊と一緒にできるラストチャンスだったのですが・・・しょうがないですね。天候だけはどうしようもありません。でも残念・・・
 また、今日の夕食は居酒屋、寿司屋の開店日で、いつものようにとても美味しい食べ物が用意されていました。このイベントもドーム旅行隊にとっては最後となりますので、思い切り楽しんで、十分に味わったのではないでしょうか?
 このイベントですが、毎回、調理担当隊員と手伝ってくれている隊員の皆さん、大変ありがとうございます。非常に感謝しています。ごちそうさまでした。

毎度おなじみのお寿司屋の写真
慣れない手つきで頑張っていますの写真
(毎度おなじみのお寿司屋です)
(慣れない手つきで頑張っています)

 46次隊の毎日の出来事を紹介してくれる新聞「Daily4646」(デイリーよむよむ)が本日、250号を発刊しました。10ページにも及ぶ特集号となっています。越冬交代から250日を迎えた今日までの昭和基地でのいろいろな出来事をいろいろな角度から捕らえ、時には大まじめに、時には面白おかしく、時には厳しい視点で捉えてきた新聞。私達と共に成長してきたみんなの新聞が今日で250号を迎えたわけです。記者の皆さんの新聞作成にかける情熱が、発行数が増えていくたびにひしひしと感じられます。365号発刊までの1通過点ですが、1号1号の積み重ねでここまで到達した重みも充分感じますし、残り100号あまりとなりましたが、今後も今までに負けないくらいの「Daily4646」になって行ってほしいですし、私たちも大いに協力をしていきたいと思います。250号発行、おめでとうございます。
 さて、みずほMT探査旅行隊ですが、天候は快晴、気温マイナス36.4℃、風6m/s。
 天候が回復したので、観測装置の設置、観測を行ったそうです。そのかたわら、昨日のブリザードで埋もれてしまったソリの掘り起こしも行なったそうです。明日はいよいよS16地点に到着する予定。予定より1日遅れとなりますが、10日に昭和基地に帰着となります。約3週間の長期旅行もいよいよ帰着が目の前になっています。地学隊と同行しているフィールドアシスタント隊員は、この旅行の10日前にS17地点で圧雪滑走路造成実験を行い、そのままこのみずほ旅行隊と合流しましたから約1ヶ月間、野外に出っ放しでしたが、ようやく昭和基地に戻ることができるのです。お疲れ様と出迎えてあげたいと思っています。

10月9日(日)

(天候:快晴・最大瞬間風速:8.9m/s・気温(最高:-22.8℃ 最低:-31.3℃)(日出4:53日入19:28))

 休日日課の今日は天候に恵まれ野外研修(散歩)日和になり、9名ほどがそれぞれの目的地に行って楽しんできたようです。徒歩でゆっくり周りの景色を堪能しながらネスオイヤ、初島、向岩、岩島それぞれが見所のあるとこですので写真、ビデオで思い出を撮影してきたようです。この海氷を渡っての散歩はまだまだ氷厚がありますので、歩く分には問題ないのですが気温が上昇し氷厚が薄くなりだすと海氷が動き出してきますので、そうなるとタイドクラックがおおきくなり徒歩での移動も厳しくなります。だいたい11月中旬~下旬が目安になっているそうですので、それまでに昭和基地周辺の野外研修が行なわれることでしょう。

野外研修に向かう隊員の写真
初島の写真
(野外研修に向かう隊員)
(初島です)

 また、オーロラもそろそろ見ることが出来なくなってくる頃にもなっています。多くの隊員は再び南極に来ることがありませんので、残り少なくなってきた南極での時間をそれぞれの過ごし方で有意義に堪能している今日この頃です。
 11月中旬頃からペンギン個体調査が計画されています。この調査は毎年行われているもので、アデリーペンギンのルッカリー(巣)でペンギンの巣の数と個体を数える調査です。そのルッカリーがある一つの島であるオングルカルベンまでのルート工作が行なわれていました。この他にも豆島、弁天島、ルンパ、メホルメン等たくさんのところにルッカリーがありますので、近々にルート工作が行なわれる予定になっています。大きい集団になると数百羽以上が集まっているところもあるそうなので是非、この調査には参加して実際にその現場を見てみたいと思っています。

ルート工作中の写真その1
ルート工作中の写真その2
(ルート工作中です)

 さて、みずほMT探査旅行隊ですが、今日はS16地点に到着し、最後の観測を行ったそうです。明日の午前中に出発し、いよいよ昭和基地に到着です。長旅本当にお疲れ様でした。

10月10日(月)

(天候:晴・最大瞬間風速:25.4m/s・気温(最高:-16.5℃ 最低:-28.4℃)(日出4:48日入19:32))

 3週間ぶりにみずほMT探査旅行隊4名が元気な姿で帰ってきました。夕食後のミーティング時にリーダーから帰着報告があり、「充分な観測と充分なデーター収集が出来たことが一番の成果。それも旅行隊メンバーの強力なサポートによるもので非常に感謝します。また昭和基地の様々な部門の支援もあり、全員が怪我なく無事に帰ってくることができました。改めてご支援、ご協力に感謝します。」という感謝の挨拶がありました。

帰ってまいりましたの写真
素晴らしい笑顔ですの写真
(帰ってまいりました)
(素晴らしい笑顔です)

 内陸の厳しい寒さや想像を超える強風などの過酷な環境(低温、ブリザード等)の中での観測には、必ずサポートがなければ観測することができません。仲間のサポートがあってこそ観測が成功するものです。この旅行隊のメンバー全員が、このことを経験を持って体験したものと思います。最後に旅行隊のメンバーの顔には達成した満足感と、無事に帰ってくることができた安堵感が見られたのが印象的でした。本当に御苦労様でした。次のオペレーションに充分に役立つことになりますし、自信にもつながっていくことになるでしょう。
 さて、この旅行隊が昭和基地に戻ってきて、久しぶりに37名全員が基地に揃ったわけです。食堂の席がやっと満席になり、各テーブルでとても楽しそうに食事が摂られていたのでした。でも、またすぐに野外に出かけて観測を行う計画が入っていますし、17日にはいよいよドーム旅行隊の出発になります。
 ドーム隊が出発してしまった後に全員が揃うのは二月中旬のしらせの中ですので、全員の集合写真のラストチャンス!!夕食後「19広場」の前で全員がいろいろな思いを胸に秘めてハイポーズ!!そんな記念すべきラスト集合写真の時にサンピラーが見事に出現。この現象も一緒に祝ってくれたように見えたのでした。

全員集合の写真
綺麗なサンピラーの写真
(全員集合です)
(綺麗なサンピラーです)

 明日から私は2回目の野外旅行(2泊3日)でラングホブデ方面に海底地下水湧出量計の設置(1台)、回収(2台)に行ってきます。前回のスカルブスネスよりは距離的にも近いところですが設置、回収を行なうところの水深がかなり深いところになっていますので、一つの作業にかなりの時間がかかる予定です。でも一度、経験していますので、やり方はほぼ前回同様で充分に観測部門のサポートができるようにそして安全に充分注意を払って行ってきたいと思います。

10月11日(火)

(天候:地吹雪・最大瞬間風速:30.5m/s・気温(最高:-12.3℃ 最低:-16.9℃)(日出4:44日入19:36))

 昨日の予定だと、今日から出発するはずであったラングホブデ方面(湧出量計回収、設置)旅行だったのですが、昨日から強風の強風が収まらず、昨日の22時過ぎに発令された外出注意令が引き続き継続していました。風の弱まり次第で出発時間を遅くしても出かけようとして様子を見ていたのでしたが、結局、強風は収まらず正午過ぎに今日の出発を中止したのでした。明日以降の天候回復を願っています。
  さて、日の出が午前4時台になり、また日の入りも19時30分過ぎまでとなり、1日がどんどん長くなっていっています。昭和基地も夏に向って移り変わっていくのが実感できます。日差しも強くなってきており、直接太陽の日差しを浴びると暖かく感じます。季節が夏に向って暖かくなっていくのと同時に私たちが昭和基地で生活する時間が日に日に短くなっていくことも事実であり、季節が変わっていく喜びと反比例するかのような気持ちにもなっている今日この頃です。

10月12日(水)

(天候:雪一時曇・最大瞬間風速:22.3m/s・気温(最高:-13.2℃ 最低:-16.9℃)(日出4:39日入19:40))

 今朝は、風もかなり収まり天候はやや曇ですが、出発には全く影響の無い天候まで回復しましたので、午前8時過ぎ、ラングホブデ方面に向って2台の雪上車に5名が分乗し、出発です。今回は1週間ほど前に2箇所に設置した海底地下水湧出量計の回収と新たに1箇所に再度設置をするのが目的です。
  昭和を出発しルート上(LE20地点)に、これも以前に設置してあった海氷GPSのバッテリー交換を済ませ、13時頃にラングホブデ生物小屋に到着です。小谷の周辺にはほとんど雪が無く夏を思わせるような景観です。小屋自体は先月行ったスカルブスネスきざはし浜小屋よりは古かったせいもありますが、立派なプレハブで中の様子はきざはし浜小屋とほぼ一緒の設備が整っています。夏に生物や地学部門の観測用のベースキャンプになったりしている小屋ですので、使用頻度が多くかなり使い込まれている感じはしましたがその分、過去の先輩方と同様にこの小屋を使用した一員になれたことが何だか嬉しくなった気が・・・

海氷上のGPSバッテリー交換の写真
ラングホブデ生物小屋の写真
(海氷上のGPSバッテリー交換です)
(ラングホブデ生物小屋です)

 湧出量計がセットされている直ぐ近くにハムナ氷ばくがあります。遠くからしか見たことがありませんでしたので、その大きさやダイナミックな感じがよくわかりませんでしたが、実際に目の前で見ると唖然とするくらい大きく、ダイナミックで自然の作り出した芸術の一つを感じたのでした。1年間に数センチ程度しか移動しないらしくいったいこれだけの氷ばくが出来上がるまでにはどれだけの歳月が流れたのかは定かではありませんが、いずれにしても豪快そのものです。その実物を目の前で見ることができた感動を多くの人に伝えて行きたいと思っています。(例えようが見つからないくらいの代物です・・・)

ハムナ氷瀑の全景の写真
雪上車と比較すると大きさがわかりますの写真
(ハムナ氷瀑の全景です)
(雪上車と比較すると大きさがわかります)

10月13日(木)

(天候:曇後一時雪・最大瞬間風速:16.5m/s・気温(最高:-10.1℃ 最低:-19.1℃)(日出4:34日入19:44))

 ラングホブデ2日目です。今日は午前中に2つ目の湧出量計の回収を行い、午後からは設置場所の調査(水深と海底の様子)を行ないました。水深185m(昨日は60m)の海底に設置されていましたので引き上げにはまず、ウインチカブースを設置されている海氷に穴を開けた場所に移動し、ウインチを使用しながら引き上げます。ゆっくりゆっくり慎重に引き上げていきます。約1時間ほどで引き上げに成功。良いデーターが取れていることを願っています。引き上げ後、次の設置するポイント調査(LE49ポイント)に向いました。ここは事前の調査で水深が460m程度となっていましたので、実際の水深と海底の状況を知るために行なうのです。水深を測るためにおもりをワイヤーにくくりつけて降ろしていくのですが、海底まで到達するまでの時間がさすがに長いこと・・・ようやく海底らしいところに着いた?という感じがしたのですが、本当に海底に着いたのかが深すぎてなかなかわかりづらかったのですが、何とか到達していることに間違いがないということで、水深メーターを見ると何と472mもあったのです。ここでも良いデーターが取れるように祈っています。

ウインチを使って降ろしていきますの写真
海中にセットされる湧出量計の写真
(ウインチを使って降ろしていきます)
(海中にセットされる湧出量計)

 野外に来ると食事が楽しみです。調理隊員が前もって朝食、昼食、夕食と振り分けて持たせてくれますので、そのメニューどおり調理をしていきます。調理といっても大きめの鍋でお湯を沸かし、そこに具材を入れていく湯せん方式がほとんどです。南極という寒い中それも野外のマイナス20~30度の中で食べるのですからちょっとした暖かさが私たちの冷え切った身体と空腹を満足させてくれるのと同時に気持ちをほっとさせてくれます。それに仲間達と一緒食べられることが一番嬉しいし、食事も美味しく食べられるわけです。
 ちなみに、昨日の夕食はズワイ蟹と魚、カキ、野菜が豊富に入っている鍋でした。いつになく、食事の量も・・・ついつい食べ過ぎてしまうのでした。ちょうど時を同じくして昭和基地で豪華にタラバ鍋だったらしいのですが、こちらは昭和基地とは異なったスカルブスネス(野外)の味も加味されている鍋もまたいいものです。
  ちなみに今日の夜はレトルト(カレー)でしたがこれも仲間と食べると美味しさが倍増する感じがするのは、私だけでしょうか・・・

10月14日(金)

(天候:快晴・最大瞬間風速:17.2m/s・気温(最高:-13.6℃ 最低:-22.6℃)(日出4:30日入19:48))

 ラングホブデ最後の日の予定は、昨日水深を測定したLE49ポイント地点に海底湧出量計を設置するために生物観測小屋を後にしたのですが、多分、再び訪れることの無いだろうこの風景を写真、ビデオに収めましたが私の記憶にもしっかり焼付けたのです。私のような庶務という業務柄、そう度々野外に出る機会が多くありませんので、貴重な野外活動支援の業務の一つ一つや周りの景色、景観、感触など全てを、これが最後だと思いながら感じ取ってきているつもりです。再び来ることの無いこの地の全てを持帰るつもりで・・・

綺麗な夕日の写真
出発の朝の風景の写真
(綺麗な夕日です)
(出発の朝の風景です)

 そうこうしながら湧出量計が入るだけの1m四方の穴を海氷上に、エンジン付のドリルで開けていきます。約1.3mの氷厚を見る見るうちにドリルが貫通し1時間半後に1m四方の穴が完成です。そこにウインチカブースが真上に来るようにセットし、ウインチが軽快に湧出量計を海底475mの底に降ろしていきます。さすがにこれだけの水深がありますのでこれまた1時間あまりかかりましたが無事に海底に到着?セット完了です。あとは観測装置がいいデーターを取ってくれることを祈るだけです。
  そのころ昭和基地では、ドーム旅行隊の出発準備が終盤を迎えており、ドーム隊用のとてつもない量の食料を2tぞりに積込む作業が午後から手空き総員13名の支援を受けて行なわれたそうです。約4ヶ月余りの食料を倉庫棟冷凍庫、冷蔵庫、乾物庫、発電棟冷凍庫よりそれぞれ運び出し、ソリに積込まれましたが量があまりにも多く急きょ、ソリにあおり用の板を作成し積込んだそうです。結局17時過ぎまでかかり食料の他に、掘削部品などを積んだソリも含め3台のソリが満載状態になり準備を完了したそうです。ドーム出発まで残すところあと僅か。明日はドーム旅行隊壮行会が企画されています。ドーム隊の心境は複雑なものなんでしょうね・・・昭和を離れたくない気持ちといざドーム基地に向って「さあこれからだ」という気持ちと何と言っても他のこの11ヶ月間共同生活を共にしてきた30名の仲間との一時的なものですが離れ離れになる寂しさ・・・複雑な心境はなんとなく理解できる気がします。

10月15日(土)

(天候:薄曇後一時晴・最大瞬間風速:5.9m/s・気温(最高:-17.5℃ 最低:-25.1℃)(日出4:25日入19:52))

 今日は、ドーム旅行隊の壮行会が盛大に開催されました。先行して10月の誕生会が行われ、3名の隊員が該当していました。併せてドームメンバーの内3名が11月以降に誕生日を迎えるため繰上げ今回お祝いをし、合計6名が対象になっていました。一人ひとりが誕生日を昭和基地で迎えた気持ちをそれぞれが語っていました。その後に壮行会が開催され、堂々とドーム隊メンバーの入場です。
 出発に向けての渡邉越冬隊長より激励の挨拶があった後に、メンバーが出発に向けての気持ちや今までの昭和基地での思い出など一人ひとりからお礼の挨拶がありました。最後にドーム旅行隊のリーダーからお礼の言葉と今の心境が話されましたが、今までのいろいろな想いがこみ上げ声が震えはしていましたが、「46次隊の一員になれて本当に良かったです。これから素晴らしい仲間と心と力を合わせて一仕事してきます。行ってきます。」この感動的な挨拶をリーダーが話し終えた後、会場全体から盛大な拍手が・・・かなりの時間、鳴り止みませんでした。感動的な壮行会となったのでした。
 また、本日限りの露天風呂がこの後営業され、この壮行会に華を添えた格好になりました。

越冬隊長とドーム隊リーダーの固い握手の写真
最後の営業となった昭和温泉の写真
(越冬隊長とドーム隊リーダーの固い握手)
(最後の営業となった昭和温泉)

 今後の行動予定を記載しますと、17日に出発し約1ヶ月間を要してドームふじ基地へと向います。途中、47次隊のメンバー7名と同行者1名が飛行機でARP2地点に来ますのでそこで合流。総勢15名でドームふじ基地へ再び出発をします。しかし、到着したからといって直ぐにドームふじ基地へは入ることができません。昨年の2月初旬に基地を閉鎖して以来ですから、基地全体の3分の1近くが雪で埋もれていますので基地に入るための除雪をします。基地の中に温風を送り込み暖め、その後に基地の発電機を立ち上げます。ようやく基地の中に入れるのは約1週間後になるそうです。この後に3代制で氷床深層掘削を開始し、過去100万年にさかのぼるコアを採取し第四紀氷河時代の気候と環境変動の実態などを明らかにする地球規模の大きな調査が目的です。
  この46次隊の大きなオペレーションの一つであるドーム旅行隊が出発し、越冬隊37名が次に全員揃うのは来年2月中旬、しらせの中になります。一つ一つのオペレーションが終了して行っています。いよいよ私たちの越冬生活もカウントダウンを始めたのです。

10月16日(日)

(天候:晴・最大瞬間風速:10.6m/s・気温(最高:-19.3℃ 最低:-26.8℃)(日出4:21日入19:57))

 いよいよ出発を明日に控えたドーム旅行隊が支援隊を含めての最後のミーティングを行い、最終的なチェックを行なっていました。リーダーが明日以降、それぞれの雪上車が引いていくソリ(各7台)の編成についての詳細などが話し合われていました。このミーティングに参加しているリーダーをはじめとするおのおのの隊員は一つ一つを確認しながらそしてその目は「さあ、出発だ!」と輝いているように私には見えました。
  私は支援隊の一員として同行しますができうる限りの支援を行なってきたいと思っています。ドーム隊が安全に到着しそして来年2月に元気な顔で再会できることを念願しています。

最後のミーティングで、最終確認をしていますの写真
(最後のミーティングで、最終確認をしています)

 最近の昭和基地は真冬を過ぎ春?夏?に向かっておりどんどん日が長くなってきています。日中、浴びる太陽光は日増しに暖かくなってきています。
  昭和基地での電力は、発電機によるものと太陽光発電で基地の電力をまかなっています。その太陽光発電のためにアモルファスシリコン半導体を用いた発電パネル88ユニットを使い、相当量の発電をしているそうです。1日~15日までの平均電力量はなんと7.1kWで基地全体の全消費電力(180kW)の約4%にもなっています。私たちの生活でもっとも重要なものの一つである電力の一部というよりは、なくてはならない存在をつくりだしている太陽光発電。これから白夜になり、今まで以上に太陽光を取り入れる条件が揃ってきますが、いかんせん太陽が出ないと活躍は出来ないのですがね・・・

これが太陽光発電用パネルの写真
(これが太陽光発電用パネルです)

10月17日(月)

(天候:晴・最大瞬間風速:9.4m/s・気温(最高:-14.4℃ 最低:-21.7℃)(日出4:16日入20:01))

 午前8時、管理棟前の19広場に越冬隊37名が勢ぞろい。ドーム旅行隊の出発式が粛々ととり行われました。越冬隊長からの激励の挨拶があり、その後旅行隊を代表しリーダーからのお礼の言葉と力強い決意が述べられ、最後にはドーム隊メンバーが見送る30名の一人ひとりと別れを惜しむような、そしてしらせで再会することを誓い合った握手をしたり、別れを惜しんで硬く抱きあうシーンもあちらこちらで・・・。

全員と硬い握手の写真
ドーム隊の意気込みが感じられますの写真
(全員と硬い握手です)
(ドーム隊の意気込みが感じられます)

 ドーム旅行隊のメンバーそれぞれが安堵感、惜別感、不安感、様々な気持ちを胸に昭和基地の多くの仲間の声援をバックに、ドームふじ基地までの約1ヶ月間(1,000㎞)の旅がこれから始まるのです。
  雪上車には「和」と「喝」の旗を取り付けてドームふじ基地を目指します。この旗には基地に残る30名、一人ひとりのそれぞれの思いが書きこまれている旗です。この旗をなびかせてひたすら前進です。この旗の持つ想いの受け止め方はそれぞれで微妙に異なるでしょうが、この旗を見て何らかのきっかけにしてもらえればと思っています。
  今日はS16地点で連結するソリの編成作業を行い、明日、午前10時に出発です。その連結作業を支援するために私をはじめとする支援隊5名がS16地点まで同行します。
  今日の作業終了後、最後の晩餐がドーム隊、支援隊で雪上車の中でささやかながら行なわれ、それぞれの隊員同士が別れを惜しみながら時間を過ごしたのです。
  また、この旅行中の数少ない楽しみ?が食事です。ドームふじ基地に着くまでの移動期間中は、これから毎日50~60㎞を目標に前進しますので、食事(特に昼食)をゆっくり取っている時間があまりないため、短時間で食事を済ませて前進をする計画です。でもできるだけ全員で一緒に食事時間は取りたいということでしたので朝食、夕食は7名全員で揃って食べるように計画しているそうです。この当たり前のことが長い旅行期間中のチームワークを保つとても大切なものになるのです。
いずれにしても46次隊全員が応援しているドーム旅行隊がドーム基地までの第1歩をスタートさせたのです。

10月18日(火)

(天候:薄曇・最大瞬間風速:10.1m/s・気温(最高:-11.6℃ 最低:-17.1℃)(日出4:11日入20:05))

 昨日から行なってきたS16地点での出発準備作業(ソリ編成等)も10時過ぎにはほぼ完了し、いよいよドームふじ基地を目指し本当の出発です。
  出発を前に、支援隊と合同で記念写真を撮影しました。ドーム隊メンバーとしばしのお別れです。一人ひとりと固い握手をかわし、無事にドームふじ基地に到着することと、来年の2月にしらせで元気な姿で合う約束を交わしました。ドーム隊全員が元気な顔でそして笑顔でそれぞれの雪上車に乗り込んで行き、元気に出発して行ったのです。

全員でニッコリ!!の写真
(全員でニッコリ!!)

 1台の雪上車に7台~8台のソリ(燃料、食料、資材、一般資材等)を引き、合計36台のソリを雪上車5台でそれぞれが引いて行く光景はなかなかのものです。
  今後の予定では、ARP2地点に47次隊のドーム関係隊員8名を乗せた飛行機が来ますのでここで合流、ピックアップを行ないます。その飛行機が下りるために滑走路整備をその前にしておかなければなりません。この整備は3名(雪上車3台)で行い、残りの4名(2台)は先発隊として先に中継拠点まで先行してドームふじ基地へと向かい、11月13日に到着予定。直ぐに基地の立上げにかかり約1週間後にようやく基地の中に入ることができるそうです。
  また、47次隊員をピックアップして先行隊に遅れること2日後にドームに到着し勢ぞろいという予定になっています。
  来年の1月末に掘削作業を終え、昭和基地へと出発します。2月11日にS16地点に到着し、しらせヘリコプターで一路昭和期基地へと向う計画ですが、復路でのブリザード停滞などいろいろなアクシデントが想定されますので、順調にいっての計画となっています。長い旅行になりますが本当に頑張ってきてもらいたいです。私達30名の声援を背中に受けて前進あるのみです。行ってらっしゃい!!
  今日の昭和基地での夕食は、25名(野外旅行がドーム隊の他にスカルブスネス方面に野外活動で出かけています)で完全に1テーブルが空です。なんだかいつものようなワイワイがやがやとした雰囲気が無かったような・・・そんな気がしています。

10月19日(水)

(天候:曇一時晴・最大瞬間風速:4.2m/s・気温(最高:-11.7℃ 最低:-17.3℃)(日出4:07日入20:10))

 ドーム旅行隊が出発して早、2日が経過しました。順調に前進しているということが定時交信の中で話されていました。その通過途中であるH100地点で無人磁力計のめばり作業を実施。17時30分にH232地点に到着。今日はここでキャンプをするということです。このH100地点で、先日、みずほMT探査旅行隊4名がこの地点に「メッセージボード」をドーム旅行隊の為に残していったらしく、そのボードを見つけてとても感動し、嬉しかったことも伝えられていました。ちょっとした気遣いですがこのちょっとしたことが大切なんですね。明日以降も前進あるのみ。とにかく前進です。ファイト~ドーム旅行隊。
  さて、21日に私が32年前に卒業した声問小学校とのTV会議中継が開催されます。とても楽しみにしています。私が日本を出発する前にTV会議をするのであれば是非、声問小学校としたいと思っていましたので、ようやく実現することができとても嬉しく思っています。その声問小学校の子供達に南極の素晴らしさを、越冬隊の皆さんに回答者としてお手伝い頂きながらほんの一部でも伝えることができるようにとも思っています。
  このTV会議は、今までかなりの回数を行なってきています。その中で私が司会をしたり、回答者となったり、カメラマンで外の映像を撮影したりで数多く出演してきました。そんな中、自分が主役となるTV会議なので、張感を持って望みたいと思っています。うまく伝えられることができますように頑張ります。乞うご期待を・・・

10月20日(木)

(天候:曇一時晴・最大瞬間風速:14.9m/s・気温(最高:-10.8℃ 最低:-15.1℃)(日出4:02日入20:14))

 今日の午後から氷山の調査に北の浦(岩島付近)に行ってきました。この氷山調査とは、研究及び広報活動用の氷山氷を中型ダンボール150箱程採取しなければならないための事前の調査です。氷山氷であればどれでもいいというわけではなく、できるだけ空気が多く閉じこもった質の良い氷(音が良くなるもの)を見つけなければなりません。いざ、探すとなるとこれが思ったような質の良い氷山がなかなか見つからないのです。また150箱分のダンボールに詰め込む作業をしなければなりませんので、積込むための充分な足場も確保しなければなりません。ようやく探し回ること2時間余りで4箇所の氷山からサンプルを採取し基地に持帰り、氷の状態をよく見て最終的にどの氷山に決定するかを決めて後日、手空き総員作業で一斉に行なう予定としています。
 旧式雪上車のアンテナ島からの回収作業で、最後の1台を回収し終了となっていたのでしたが、もう1台雪の中に埋もれているのが発見されていましたので、掘り起こし作業が実は継続して行われていたのです。かなり以前から発見はしており、その時に一気に掘り起こし作業を行ったのですが、作業途中にブリザードが来てせっかく掘り起こしたところがそっくり埋まってしまうことを数回繰り返したという事実もあったらしく、再び環境保全隊員を中心とする数名の支援者も含めて掘り起こし作業が行われていました。雪の部分は取り除いたのですが、下の方は凍り付いてる状態で悪戦苦闘しているらしく、簡単には掘り出すことができないらしいです。明日から天気予報が降雪を伴う強風が予想されていますので、再び悪夢が・・・天候があまり崩れないようにと心配していた担当者の顔が印象的でした。

埋もれてしまった使用済雪上車の写真
(埋もれてしまった使用済雪上車)

 さてドーム旅行隊はといいますと、今日も前進あるのみで、68kmを走破。特に人員、車両とも異常無し。明日はみずほ基地に到着予定だそうです。着実に前進して頑張っているようです。  明日は、私の出身小学校である声問小学校とのTV会議中継の本番です。今日の9時すぎに接続テストを行い、司会をしていただく朝日新聞の中山記者と詳細を打ち合わせて準備万端です。明日は子供達に南極の素晴らしさのほんの一端でも伝えられるように頑張りたいと思っています。回答していただく越冬隊長をはじめとする隊員の皆さん、関係スタッフの隊員の皆さん、そしてギャラリーとして参加していただく隊員の皆さんの全面的なご協力を頂いて成功するように頑張ります!!

10月21日(金)

(天候:ふぶき時々雪・最大瞬間風速:19.8m/s・気温(最高:-10.8℃ 最低:-15.1℃)(日出4:02日入20:14))

 私の出身校の声問小学校(32年前に卒業です)とのTV会議が午前9時からスタート。小学校側の司会は朝日新聞中山記者。昨年、45次越冬隊の同行者として越冬し、ドームふじ基地へも同行した経験を持っています。その中山記者と声問小学校の子ども達の元気な「昭和基地のみなさ~ん。こんにちは~」全校生徒が50名に満たない全校生徒が元気一杯の声での呼びかけで始まりました。昭和基地のリアルタイムの影像(現在の気温を含めて)をまず見てもらいました。子供達はモニターに映し出される昭和基地周辺の様子が、思い描いてた南極とやや異なっていたようなどよめきがあがっていました。ちょっと残念だったのは、天候が曇で気温もマイナス10度程度で昭和基地では比較的温かい気候でしたので、太陽が燦々と照りその光で氷山などの景色が綺麗に見え、気温もマイナス30度を超えダイヤモンドダストでキラキラしているところ、またその正反対で風速30m/s以上のブリザードで物すごい状況であれば南極らしかったのでしょうが、普通の天候もあることもわかってもらえたと思います。

多少、緊張していますの写真
(多少、緊張しています)

 その後、質問タイムに移り、小学校側から3問の質問がありました。
 1問目は食べ物に関することで、「日本からどんなものを持って行きどんなものを食べているのですか?また足りなくなった食料はどうやって補給しているの?」これは調理担当隊員からたくさんの写真を使った回答をしてもらいました。最後にたまねぎ、ジャガイモ、パック詰めの冷凍玉子などの実物も登場。特にたまねぎは芽が出でおり、質問をしてくれた児童はこれにはびっくりしていたようでした。
 2問目は、「どんな生き物がいるの?」これは越冬隊長がペンギン、アザラシ、そしてコケ、ショウワギスなどの魚、ウニ、ホヤなどたくさんの種類を紹介していただきました。質問した児童はこれほど多くの種類がいるとは思っていなかったとこれまたビックリした様子でした。
 3問目は、観測隊の生活の様子に関することで「どんな服装で、どんな生活や仕事をしているの?また楽しかったこと、辛かったことは?」この問題には気象担当隊員で隊の総務担当をしている隊員に観測している様子、施設を管理している様子等が回答されました。また、家族と長い間会うことができないことがとても辛いことですということも話されていました。
 続いて昭和基地から問題を出して子供達に○×の札で回答してもらうクイズ方式で、少しでも南極のことを楽しく参加しながら知ってもらおうということで行ないました。「氷山の氷はしょっぱい?」「ペットは飼っているでしょうか?」「携帯電話をかけてつながるでしょうか?」この3問を出題しましたが、氷は実際に氷山氷を小学校の会場に用意してもらって味見をしてもらって実感してもらったり、ペットについてはタロ、ジロの写真を見せたり、携帯電話は実際に昭和基地からかけてみてビックリしてもらったりでとても楽しんでもらいました。最後に、全校生徒による素晴しい「よさこいソーラン踊り」を見せてもらい、今度はこちらが感動させられました。
 約1時間余りの時間でしたが子供達にほんの一部かもしれませんが「南極」のことが伝えられたことが私にとってとても嬉しかったですし、子供達も実際に氷山に触れてみたり、リアルタイムの影像を見ることができ、一瞬でも南極に触れられた感動を今後忘れないでほしいと思います。このことがきっかけとなり、近い将来、観測隊員の一員としてこの南極昭和基地に来て、実際に見たり触ったりして南極を感じてほしいものです。そして今度は伝える側になって子供達に伝えて行ってほしいものです。
 今回のTV会議中継をするにあたり声問小学校を初めとし、朝日新聞の中山記者、武田カメラマンそしてスタッフの皆さん、稚内市役所の皆さん、回答者として参加いただいた越冬隊長、各隊員の皆さん、スタッフの隊員の皆さん等多くの方々のご協力に感謝いたします。大成功のうちに終了でき、ホッとしています。良かったぁ~

10月22日(土)

(天候:ふぶき時々雪・最大瞬間風速:32.1m/s・気温(最高:-8.5℃ 最低:-11.2℃)(日出3:53日入20:23))

 午前7時に外出注意発令のための人員確認の全館放送で休日日課の早朝から起こされてしまいました。昨日からブリザード予報が出されてはいましたが、朝一番とは・・・ブリザードになると気温が上昇するのですが、厳冬期を既に越えており夏にむかっているこの時期ですので、マイナス8℃まで上昇し、管理棟の中もほんのりいつもよりは暖かくなっていました。特に私のいる庶務室は普段でも暖かいのですが、なお一層暖かいというよりは暑くなってきました。なんと常時27℃です。ちなみに扇風機を回して仕事をしています。窓を開けて冷たい風をと思うかもしれませんが、管理棟ばかりではなく昭和基地のほとんどの建物の窓は開かない構造になっています。

庶務室の窓で、開きませんの写真
扇風機はいつも回っていますの写真
温度が・・・の写真
(庶務室の窓で、開きません)
(扇風機はいつも回っています)
(温度が・・・)

 これは寒さ対策もそうですが、強風対策もあるのではないかと推測されますが、しかし、庶務室はこれから夏にむけてもっと暑くなり30℃を越える室温との戦いもこれから始まるのです。(ここは本当に南極?)
 さて、そんな外出注意が発令されている中、毎月恒例の消火訓練が行われました。今日の想定出火場所は倉庫棟ということで出火から数分で人員確認、初期消火、鎮火確認、人員確認と一連の訓練を終了したのでした。またその後、油流出事故対応訓練も行われました。流出事故が起きた時、現場に持っていくものとその保管場所などが確認されたのです。特別な道具を持ってということではなく、モップやちりとり(油をすくい上げる)オイルコレクター(シート状油吸着材)で油が拡散する前に素早く集め取るということが基本になっていますから、これらの道具でも充分に役に立つのです。消火訓練のように何よりも素早く現場に駆けつけることが重要になっていますが、まず油漏れを起こさないことと、十分な毎日の点検を怠らないようにしなければなりません。

10月23日(日)

(天候:曇一時雪・最大瞬間風速:16.6m/s・気温(最高:-4.4℃ 最低:-7.1℃)(日出3:48日入20:27))

 本日も休日日課。しかしながら、休日にほぼ関係ないかのように活発に業務が行なわれた1日となりました。
 まず、地学部門の観測のためスカルブスネス方面に5名が出発していきました。この調査目的はオーセン、ブライボークニーパ広江池の湖底の堆積物の採取、露岩GPS観測、西ハムナ池へのルート工作など盛りだくさんの計画になっています。特に数箇所の池の湖底堆積物採取作業は観測資材、機材(一人約20kg)を背負って、海抜200mを越えるところに位置する池まで露岩が露出して非常に歩きづらい道なき道を行かなければなりません。6泊7日の期間での調査となっています。
 また、以前からコツコツと作業している旧型雪上車(本当に最後の1台)の掘り起こしが行なわれていました。昨日のブリザードで埋没する恐れがあったのですが、それほどでもなかったそうで引き続き掘り起こし作業に環境保全担当隊員と数名の隊員が汗を流していました。最大の難関である氷で覆われているところですが、最近の暖気で少しずつではありますが氷が緩み始めてきていますので、これからは作業の進み具合も上がっていくものと思われますが、なんといってもブリザードがこの作業最大の敵になっています。
 さて、私はといいますと休日日課とは程遠く朝から業務に追われていたのです。まず、8時過ぎから香川県高松市とのTV会議が行なわれ、いつものように総合司会での出演となりました。今回は4箇所を同時に結んでの4元中継(昭和基地、愛媛大学、NICT小金井本部、高松市)で行なわれいつものように子供達の南極に関する質問に昭和基地側から回答するというパターンでした。回答者には四国出身の隊員(松山市出身、香川県在住)が回答するという演出もあり、大いに盛り上がったTV会議となりました。

向かって左の隊員が香川県在住隊員ですの写真
(向かって左の隊員が香川県在住隊員です)

 また、午後からはとっつき岬付近のタイドクラックが大きくなってきていましたので、その調査に向かいました。このクラックの調査、海氷厚を調べてみると一番薄いところで35cm程度なっており、その場所にはうっすら海水がにじみ出てきているのも確認できました。
 大陸に上陸するためのルートはこのクラック上を通過するものになっており、今後の使用頻度を考慮すると通過するポイントの移動をしなければならないと判断し、できるだけ安全な通過ポイントを見つけなければなりません。幸い現在のポイントよりもクラックの幅が狭く氷の状態もしっかりとしているポイントを見つけることが出来ましたので、氷厚調査を十分に行い移動させることができました。しかし、時期的にこの海域は早くに氷が移動するところになっているそうなので、ここを通過して行われるS16、17燃料移送等のオペレーションは早めに終わらせることが必要になってきています。
 さて、ドーム旅行隊はといいますと午前中は悪天候によって視程が約200m程度となっていたため出発を午後からとしたため、23km程度の移動になったそうです。明日もこのまま天候が回復しなければ停滞する可能性があるとのことでしたが、安全に注意して頑張れ~

10月24日(月)

(天候:吹雪・最大瞬間風速:22.4m/s・気温(最高:-6.8℃ 最低:-10.6℃)(日出3:43日入20:32))

 今日は朝から多少雪が降っていましたが、それほど視程が悪くなかったためとっつき岬~S17地点に航空オペレーション用の燃料用ドラム缶を移送する作業が行われました。
 まず、SM50の雪上車3台で燃料ドラム満載(1台に12本)のソリ6台をとっつき岬まで引っ張っていきましたが、時間が経過するにつれて天候が怪しくなってきました。降雪を伴い風が徐々に強まってきたのです。このオペレーションのリーダー(フィールドアシスタント)が、この天候ではS17地点までは無理と判断し、とっつき岬までのそり移動で見切りをつけ安全を期して昭和基地へと引き返したのです。時間が経つほど視程が悪くなりやや心配されましたが無事、基地に到着となったのです。さすがこの判断は冒険家でもあり野外経験豊富なフィールドアシスタント。素早い判断で計画変更をし、昭和基地へと戻る判断をしたところはさすがです。戻れる範囲ギリギリのところだったと思います。そのギリギリを超えるようであれば停滞をし、じっと天候が回復するのを待つことも選択肢の中にはあったと思います。この判断はさすが冒険で養われた経験と言えます。
 野外行動にはかなりの割合でこの隊員がサポートしています。送り出す側も同行してもらう側もとても頼りになるまさにフィールドアシスタントです。
 さて、ドーム旅行隊はMD46地点に到着。多少、天候が悪く地吹雪によって視程が1㎞以下になったそうで移動は慎重にゆっくりと走行したそうです。雪面の起伏が大きくなってきてはいるそうですがまだ1mを越えるようなものは無いそうです。
 気をつけて進め~?

10月25日(火)

(天候:雪時々曇・最大瞬間風速:10.6m/s・気温(最高:-8.4℃ 最低:-11.7℃)(日出3:38日入20:36))

 毎月、月末恒例の部会が開催されました。越冬交代後既に10回目を数える部会。観測部会の中で、11月は海氷の状態が徐々に悪くなっていくため海氷上のルートを使って遠方に行く観測は最後になる可能性があります。そのため地学部門を始めとして最後の野外活動の計画が数多く出されていました。数多くの観測研究成果を持帰るために今月一杯、目一杯の観測を行うのです。また充分に安全に注意して観測してほしいことも越冬隊長から告げられていました。
 また設営部会の方は、施設、設備のメンテナンス等が中心となっていますが、持帰りの準備や47次隊の受入れ準備など各部門の項目が目立つようになってきています。
 生活部会はドーム旅行隊6名が抜け各係は少数精鋭で頑張って活動しています。新聞係は5名が抜けてしまいましたので急きょ、新聞記者募集をして、なんとしてでも越冬期間中の継続発行を目標にしています。新規で加入した新聞記者も含めて46次越冬隊の情報源である「Daily46464」を新聞係一丸となって頑張っていくということです。私たちも記事、ネタを提供しながら協力して行きたいと思っています。

生活部会の模様ですの写真
(生活部会の模様です)

 さてドーム旅行隊は、昨日からの悪天候も若干回復し、視程も5㎞程となりましたので、朝8時40分にMD64地点を出発し、18時MD114地点に到着。本日の走行距離50.6㎞。今のところ計画より3日ほど進んでいるとのことですが、何が起こるかわかりませんのでこのまま慎重に前進していくとのことでした。

10月26日(水)

(天候:雪後曇一時晴・最大瞬間風速:5.6m/s・気温(最高:-9.4℃ 最低:-21.0℃)(日出3:34日入20:41))

 ウエッデルアザラシの出産シーズンが到来した模様です。管理棟前の北の裏(岩島)周辺で先日、氷調査を行った時に生まれて間もないウエッデルアザラシの親子づれを発見しました。また、とっつき岬付近でも3組の親子連れ(子供のお腹にはへその尾が付いているのもありました)を確認できました。季節が変わり始めこの時期に出産を迎えるのでしょう。
 アザラシは15m、ペンギンは5m以内には近づいてはいけないことになっていますので、写真もズーム、望遠を最大限使って隊員が撮影しています。私も望遠で撮影をしましたが、さすがに可愛いですね。
 また、アデリーペンギンの集団が海氷上で確認されています。昭和基地の近くにルッカリー(巣)がある島(メホルン、オングルカルベン、豆島等)がありますのでペンギンも卵を産む準備を整えてき始めたところでしょう。例年11月15日前後にこれらのルッカリーで個体数と巣の数を数えることになっていますので、こちらもこれらの島までのルート工作を始めたところです。昭和基地周辺も確実に季節が移り変わって行くことが気温、天候を含めて実感しているのです。

アザラシの写真
ペンギンの写真
(コメントは必要ありませんね)

 その季節の移り変わりは速いもので、どんどん白夜に近づいていっているのが良くわかります。この白夜は、11月中旬~1月中旬まで太陽が沈まない時期になり、一日中暗くならないことになります。今も午前3時頃には明るくなり21時過ぎまで薄明るく、真っ暗になるのはほんの数時間となってきています。そのためすでにオーロラを見ることがごくわずかとなっています。盛んに出現している頃はたいしたことのないオーロラだと「ふ~ん、この程度」など贅沢を言ってみることすらなくなっていたのですが、このように見えなくなるとなれば、もっと見ておけば良かったかなぁ~なんて後悔している隊員あちらこちらに・・・
 さて、ドーム旅行隊はMD114ポイントからMD170ポイントまでの56.8kmを走行したということです。途中に大きなサスツルギ(約1.5m)が行く手を阻んだそうですが、どうにかコースを選びながら進んだそうです。気温もマイナス32度と下がってきていますが、それより気圧が694hPaとなり息苦しく感じてきているそうです。そんな困難を乗り越え頑張れ~

オーロラの写真その1
オーロラの写真その2
(こんな綺麗なオーロラも見ることが出来なくなりました)

10月27日(木)

(天候:薄曇一時晴・最大瞬間風速:5.9m/s・気温(最高:-14.5℃ 最低:-25.0℃)(日出3:29日入20:46))

 昭和基地も最近は気温がどんどん上昇しており、直射日光に当たっていると非常に暖かく感じ、羽毛服で少し作業などしたらすぐに汗だくとなり、薄いヤッケを着ている隊員もちらほら見えてきました。しかしながら今日はやや晴れたため少し冷え込み、最低気温がマイナス25℃になり最高でもマイナス14℃までしか上昇しませんでした。まだまだ夏には程遠い気温ですが昼間が長くなり太陽の日差しの強さが目立っていますので、肌で感じる寒さはそれほどのものではありませんし、一番違うのは気持ち的にあと少しという気持ちがありますので余計に暖かく感じるのでしょうか・・・
  今日も先日に引き続き環境保全隊員を中心に数人が本当の最後の旧式雪上車の掘り出し作業を行っていましたが、遂に午後3時過ぎにようやく氷に閉ざされていた部分が取れ、動き出したのです。雪上車で牽引し最後はブルドーザーに引き渡し、迷子沢のデポ地へと引かれていったのでした。これで本当に最後の最後18台目の旧式雪上車の掘り起しが終了したのです。アンテナ島に置かれていた錆だらけの旧式雪上車が全て移動され、日本へとようやく持帰ることになります。KD型の旧式雪上車、今ではSM100型という1次隊では想像もつかないくらいの大型の物が活躍していますが、当時はこの旧式の雪上車がおおいに活躍したそうです。その雪上車も任務終了で帰国します。お疲れ様でした。

ようやく掘り起こせましたの写真
現在の雪上車に引かれて行く旧式雪上車の写真
(ようやく掘り起こせました。)
(現在の雪上車に引かれて行く旧式雪上車)

 ドーム旅行隊は今日の13:50分、予定より4日ほど早くARP2地点(47次隊が飛行機で着陸する地点)に無事到着したとのことです。(人員、車両、装備、食料は全く異常無し)さすがにここまで登ってくると気温もマイナス42.5℃、気圧663hPaと厳しい環境です。息苦しさも感じ、なおかつ寒いとなればさすがにきついことでしょう。しかし中継拠点旅行で一度経験している隊員が多いため、経験者はそれほどのものではないとは思いますが3名は初めての経験で、さぞかし大変かとは思いますが頑張ってほしいものです。ここで飛行機が来るのを待ちます。先発隊として先に出発してドームふじ基地を目指すチームに分かれての行動になりますが、2泊はここで作業をしてから出発の予定になっています。ここから先も簡単に到着なんてことはありませんので、安全に走行しドームふじ基地を目指してほしいものです。

10月28日(金)

(天候:薄曇一時晴・最大瞬間風速:17.4m/s・気温(最高:-5.6℃ 最低:-17.5℃)(日出3:24日入20:51))

 最近の昭和基地の周辺をペンギンが団体で行進していくのが多く見られます。その度に隊員が写真、ビデオを持って移動しています。このアデリーペンギン、10~30羽近くの団体で進んでいきます。ペンギン独特の愛嬌のあるヨチヨチした歩き方でぎこちなく足場の悪いところを進んでいきます。少し歩いては腹ばいで氷の上を滑るように進んでいきます。このスピードといったらかなりのもので、人間が軽い駆け足程度もしくはそれ以上のスピードで進んでいきます。立ち上がり、よちよち進んでは腹ばいになりスムーズに滑るように進んでいきます。なんとも可愛らしい歩き方、しぐさにひかれるのでしょうか。しかし、ペンギンのルッカリーに行きますと多いところでは2千~3千にもなるところがあるそうですが、想像がつきませんし、意外と人間がしり込みするくらいかも知れません。
  11月中旬に毎年行なわれている個体調査がありますが、これは国際的な研究プログラムの一部として行なわれているもので、今までの調査結果として昭和基地やロス海域では増加し、南極半島域では減少していることがわかっているそうです。このような個体数の変動は長期的な気候変動、毎年の海氷条件、人間の漁業活動などの影響を受けるのではないかと考えられ、毎年モニターをしているとのことだそうです。ペンギンの調査も国際的な地球規模の環境変化に役立てられているのです。

ペンギン大行進の写真その1
ペンギン大行進の写真その2
(ペンギン大行進です)

10月29日(土)

(天候:曇・最大瞬間風速:13.4m/s・気温(最高:-4.2℃ 最低:-8.5℃)(日出3:19日入20:56))

 ここ最近、昭和基地で命の発電機2台の内、1号発電機の調子がいま一つで、発電機担当隊員が日夜、調整を行なっています。この発電機は熱電並給型300kVAディーゼル発電装置が2基あり、交互に運転を行なって大切な電気(電圧400V)を管理棟、各観測棟に供給し続けているのです。電力の供給はもとより、エンジン冷却水熱、排気ガス熱を回収して、造水、温水暖房の熱源としても利用しており、燃料の持つネンルギー大部分を回収し有効利用を行なっているのです。この他に非常用発電装置(200kVA)2基が有りますが、常用発電機が不慮の事故で長期間にわたり使用できなくなった時に生活基盤を夏期隊員宿舎に移動しごく限られた地域に給電のみ行なわれるものなので、できるだけこの非常用発電機を使わないように日々、常用発電機を整備しているのです。また、その他には太陽光発電装置(45kW)も設置してあり、常用発電機の電力と連携し基地の電源として供給を行なっています。また、風力発電機も今はテスト段階ですが1基(46次隊で建設)あり今後、有効的に使用されることと思います。このように昭和基地では電力は非常に重要で今、現在行なわれている観測のほとんどがコンピューターを使用しているわけで、電気がありませんと全くと言っていいほど観測ができなくなってしまいます。このため電気に関しては充分とはいきませんがフォロー体制を取りながら日々節電に心掛けて、できるだけ急激な高負荷を発電機かけないようにして発電機を大切にしながら生活をしています。
 そんな状況の中、必死に発電機と対応している担当関係隊員の皆さん、お疲れ様です!!

昭和基地の心臓部の写真
調整中の発電機の写真
(昭和基地の心臓部です)
(こちらが調整中の発電機です)

10月30日(日)

(天候:曇一時晴後雪・最大瞬間風速:13.9m/s・気温(最高:-7.5℃ 最低:-11.1℃)(日出3:14日入21:00))

 今日は、47次隊の夏オペレーションで計画されている日独航空機共同観測のためのS17地点に設置されている滑走路の整備作業、またS16地点に残置されるSM100、SM50型雪上車の目張り作業、気象隊員による気象ロボットのメンテナンス作業のため1泊2日の日程で出発しました。私は、滑走路の硬度の測定、小型除雪車小屋の移転、目張り作業を中心に行なったのです。

目張りをして雪の侵入を止めますの写真その1
目張りをして雪の侵入を止めますの写真その2
(目張りをして雪の侵入を止めます)

 この日独共同観測を少し説明しますと、「ゴンドワナ大陸の形成と分裂」及び「しらせ氷河流域を例とした東南極氷床の流動機構」を飛行機に搭載されている磁気、重力、アイスレーダー、レーザー高度計によるマッピングにより明らかにする、という難しい研究観測をS17地点を航空拠点として行う予定となっています。このため本拠地となる施設建設(ジャッキアップ式の食堂棟、発電棟等)を行なうことが47次隊で計画されています。大規模な計画になっており、その受入れ準備ともいえる作業を46次隊が行っているのです。
 このように、南極観測に関して世界各国の基地が共同で観測を行い、地球全体の調査研究を世界中で解き明かそうと行なっているのです。私も、そのほんの一端の一員となれたことをとても感謝しています。
 このS16、S17地点は、17日にドーム旅行隊の出発支援隊としてきていますし、これで3度目となりますが、特にS17地点に全長2kmにも及ぶ雪面の滑走路らしきものが出現して、本当に飛行機が降りてこられるのかふと心配になったのも正直なところです、
 予定では12月1日に最初の飛行機がこの滑走路を使用し着陸し、ここで燃料補給を行い、再び飛び立っていく計画になっています。滑走路の整備と補給用の燃料ドラム缶も既に綺麗に並べられており、受入れ準備は着々と進んでいるのでした。

滑走路を踏み固めていますの写真
滑走路の硬度を測定中の写真
(滑走路を踏み固めています)
(滑走路の硬度を測定中)
燃料ドラム缶も綺麗に並べましたの写真
(燃料ドラム缶も綺麗に並べました)

 また、今日の日本時間11時30分に47次隊のドーム隊7名が出発したのです。成田を飛び立ち、まずはシンガポールへと行きそこでヨハネスブルグ経由でケープタウンに向かいます。ここで共同チャーターの飛行機に乗り継ぎ、ノボラザレフスカヤ基地へと向かい、そこで再度乗り換えで46次隊ドーム隊がすでに到着しているARP2地点に到着の予定となっています。それにしても飛行機の乗り換えの回数と時間、途中3日ほど飛行機の出発時間の都合でケープタウンに宿泊しますが、日本を出発してからわずか4日で来ることができるのです。私たちはオーストラリアのフリーマントル港を出発し約2週間かかって来ているのにも関わらず、4日ほどで来れてしまうのも昨年でわかっているのですが改めてビックリ!!意外と14,000㎞は遠くて近いんだと・・・

10月31日(月)

(天候:曇一時晴後雪・最大瞬間風速:13.9m/s・気温(最高:-7.5℃ 最低:-11.1℃)(日出3:09日入21:05))

 今日で10月も最後となり、いよいよ明日からは11月に入ります。11月は気温が上昇していきますので、海氷の状態も11月後半に入るとかなり解け始めてくるようで、雪上車での海氷ルートを使って遠方の観測が行えなくなる時期になります。ですから、11月は冬期間最後の野外活動となりますので、初旬から中旬にかけて多くの予定が入っています。特に地学部門は宿泊、日帰りと多くの予定が入っており、打合せ会議、準備におおいに忙しそうに走りまわっているのでした。
  いよいよカウントダウンの始まりです。私たちの越冬生活終了まであと、92日となります。
  さて、ドーム旅行隊は、ARP-2で航空機を待つ航空支援隊と先にドームふじ基地を目指す先発隊とに分かれて行動を行なっているようです。航空支援隊は滑走路の整備を行ない飛行機が安全に着陸できるように整備を行なっており、吹流し、国旗も掲揚して準備万端だということです。先発隊はまずは、中継拠点(MD364地点)を目指して走行を続けているそうです。どちらの隊も人員。車両、食料に異常はないとのことです。

第46次日本南極地域観測隊 越冬庶務 近江


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