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第46次南極地域観測隊 近江隊員の南極滞在記(2004年12月分)

12月1日(水)

 しらせ停泊中により本日は特に公式行事がなく、隊員はそれぞれパース、フリーマントルの観光に出かける。自分もパース、フリーマントルに行き観光を楽しんだ。

12月2日(木)

 本日も、しらせ停泊中により公式行事無し。最後のパース、フリーマントルでの観光や食べ物、飲み物の買い出し。パースの目抜き通り(名称は不明)で、日本人の観光客がものすごく多かった。すれ違う人の三分の一くらい(ちょっと大げさかも)それくらい多かったのには驚いた。最近、パースはなかなかの人気スポットだそうだ。

バースでのひととき

パースでのひととき

 最後の晩餐を隊員全員で行う。本当に今日で文明社会とお別れで、これから観測隊員のみの生活が始まる。気軽に買い物が出来なくなり、観測隊員以外の「人」とも逢えなくなる実感が沸いてこない。これからが本番である。

最後の晩餐!?

最後の晩餐!?


12月3日(金)

 いよいよ午前10時出航。地元の日本人会の方々、他関係者の大勢の暖かい見送りを受けて、また、隊員それぞれの思いを胸に南極に向けて出発。身が引き締まる思いである。
 出航後、すぐに、しらせ側と観測隊の顔合わせ式。フリマンで積み込んだ免税品を個人配布。またまた全員作業で終了。
 しらせ艦内を見学。非常に通路が狭く、艦内は解りずらい。しかし、総勢170名のしらせ乗組員の全面的なバックアップを受けていることを再認識。救命胴衣装着方法、不測の事態の対処法等安全に関する講習。安全に関しては昭和基地でも重要で、一人が欠けても支障をきたすため普段から十分に気をつけなければならない。
 しらせ大学開講。これは観測隊員が講師となり観測の内容をしらせ乗組員に説明する内容。学長は、今中隊員(京大大学院教授)全4回にわたり開催。

12月4日(土)

 溺者救助(人員チェック訓練)を行う。これは、居なくなった隊員をいかに早く確認し次の行動(救助)できるかというもの。やはり、訓練と言うのが解っている為、あまり緊張感がなく点呼自体も要領悪し!まだまだ危機管理が身に付いていないことを実感。

海洋観測説明会
しらせ大学(2日目)
 航空機(ヘリ)救難用具、発煙筒取扱法の訓練。これは、しらせ、観測隊の空輸、人員輸送の要であるヘリコプターについての基礎知識から着陸地点の発煙筒のたき方の訓練。
 終了後、海上観測の8の字走行。本日よりトレーニング開始
 長い船上生活だと体がなまる為、筋トレで体を絞り込む予定。
 夏オペレーションでハードな作業があるため基礎体力を付けておかなければ・・・

12月5日(日)

本日南緯40度通過。
停船観測。いよいよ本格的な海洋観測が始まった。

海洋観測

 本日、就航以来最大の揺れ(22度のかたむき(人間がまともん歩けない。)机の物がストッパー無しでは全てが落ちてしまうくらいである。今回のしらせ艦長は最大52度を経験したらしい。想像が付かない。

22度の傾きを示す計器

22度の傾きを示している


12月6日(月)

 しらせ大学の講師は毎日二人、延べ8人が講師として46次で行なう観測について説明した。本日は最終日で宙空隊員の行松隊員によるオーロラの話しとタイ国からの同行者ワラノップ博士のタイの海の話し等が話された。
 8の字観測(二日目)・停船観測(二日目)
 今日も頻繁に揺れている。17~18度くらいが頻繁に揺れてきた。さすが南緯40度を超えると揺れる。40度からは3回の暴風圏を越えなければならない。揺れないことを祈る。
 夕方に「タイガーカットハウス」(艦内の床屋)にて坊主になった。散髪してくれたのは理髪チーフである原田さんにしてもらった。

タイガーカットハウス坊主になりました
タイガーカットハウス坊主になりました

 私が第1号と思いきや、残念ながら他の隊員が1号で少し残念。高校以来の坊主(6mm)カットでなかなかさっぱり。評判の方も社交辞令のごとく反応よし!私につられてあと4人ほど坊主に・・中には1mm、斬新なスタイルも・・・

12月7日(火)

8の字航行
停船観測(St3)
 夕方より野外観測パーティーに対する食料がしらせ側より支給。
 全員作業で配分。約2時間半かけて終了。これは昭和周辺の地学グループの石の採取や生物グループのペンギン調査、湖沼グループのコケ調査等で野外に泊まりがけで行くための食料である。長いところでは数週間単位になるため食料も相当量になり、これを小分けする作業もまた大変。

食料を小分けする地学チーム

食料を小分けする地学チーム

12月8日(水)

停船観測(St.4)
本日、8:36:42に南緯55度を通過。さすがに気温も下がってきた。
21時ころに氷山のかけらを発見との艦内放送。
非常に遠いところであまりよく目では確認がとれない。

 毎年、しらせ艦内で発行している「南極新聞」の中で氷山を目視確認した日時を予想するクイズがあり、例年だと12月9~10くらいで目視確認できるようだ。私は9日19:19分と予想したが果たしてどうだろうか?
 またまた坊主追加!今日は3人ほどだが、1人はついに剃り上げてしまった。

12月9日(木)

 いよいよ南緯60度通過。さすがに気温も見る見る下がる。
 氷山のかけら(小さいの)がいよいよ出てきた。しかし、基準に至らず初視認とはならず・・・残念・・・

12月10日(金)

 今日は、氷山が初視認された。15時21分 。ニアピンはしらせ乗組員。20数分のずれであった。第2位は観測隊の同部屋住人でもある溝渕隊員であった。おめでとう!

初視認された氷山初視認された氷山

初視認された氷山

 しらせに乗っている歯科医による講話があり、虫歯予防についての話であったが、しらせは2月中旬で離岸してしまう。その後もし歯が痛くなったら、観測隊のドクターに初期治療してもらうしか無い為、出来るだけ予防に努めなければ・・・・
 越冬隊が昭和基地で生活していくための越冬内規づくりの打合せが始まった。この中には防火・防災、ブリザード対策、野外安全行動、レスキュー方法、廃棄物処理等の詳細についての検討で、一歩外に出たら日本とは全く異なる、厳しい環境でのルールづくりである。

12月11日(土)

 今日も昨日の内規づくりの打合せ。今日は延々と朝の9時から午後10時まで・・・それでもまだ終わらず。しかし自分たちの生きてゆく為の細則だから眠い目をこすりながら、睡魔と戦いながら・・・?
 昨日の氷山、初視認があってからたくさんの氷山が流れてくる。
 大きいとはきいていたがこれほど大きいとは・・・とてつもなく大きい。改めて自然界の凄さを感じた。

相当な大きさの氷山

相当な大きさの氷山

12月12日(日)

 本日南緯61度36分通過。
 どんどん南極に近づいていく!暴風圏も突破し、海も穏やかになり、太陽も23時を過ぎても暗くならなくなってきている。
 本日の24時が23時に調整され日本と時差が4時間!どんどん環境が南極になっている。氷山の大きさも桁外れ(写真有り)
 予定では18日くらいに昭和基地に着き、ヘリで隊長が表敬訪問の予定。自分の荷物も整理しなければ・・・・

比較する物が無いので大きさが伝わらない

比較する物が無いので大きさが伝わらない

12月13日(月)

 本日南緯62度17分、東経61度06分通過。
 大きな氷山が通り過ぎ、小さな氷山のかけらが多くなってきた。 気温は0度前後で天候も落ち着いている。
 今日はしらせの中のいろいろな部屋の写真を撮ってみた。また自分の部屋もついでに・・・また、地元で開催して貰った壮行会で頂いた旗を自分の部屋に貼ってパチリ!

マイルームで壮行会の旗をバックに・・・

マイルームで壮行会の旗をバックに・・・

 最近はくじらがよく現れるという放送が入る。そのたびに甲板に行って見るが望遠レンズじゃないため、あまりいい物を撮ることができない。鯨については船上での目視観測という大事なオペレーションがある。これは水産庁より専門官が隊員として乗船している。

12月14日(火)

 本日南緯62度49分、東経49度59分通過。
 今日も順調に昭和に向け進んでいる。どんどん海氷が多くなり、ペンギン、アザラシなどが氷の上で確認されてきている。一応放送が入るのだが、それから隊員がカメラ、ビデオを手に右往左往、艦内を走り回っても、当然のごとく動物は待ってはくれない。そういう人間を見ている方がおもしろい。

12月15日(水)

 本日南緯65度55分、東経39度00分通過。
 あと2日でいよいよ昭和基地に向けてしらせから、大平艦長、松原隊長がヘリコプターで上陸します。
 海は氷一面に覆われていますが、海氷の厚さがそれほどでもなくチャージングなしでスムーズに前進しています。
 太陽が沈まない「白夜」になり夜中もほとんど明るく、時間の錯覚を起こしそうです。しらせは窓が少なく、特に自分の部屋は一つも無いので睡眠をする上で支障をきたしていないのが救いです。
 また、「耐寒訓練」という恒例の行事が総勢126名の強者が参加。参加者はふんどし、短パン一枚で中には、仮装して参加した人もありおおいに盛り上がりました。気温は0度程度ですが、風が強く、参加者は絶叫をしながら決められたコース(しらせ甲板一週)を行進しました。
 途中、恒例の水掛け、船首での記念撮影、最後は暖かい豚汁が待っていましたが手が震えて食べられない状況が数分間続きました。なかなかの耐寒訓練となりました。

12月16日(木)

 本日南緯67度40分、東経38度14分通過。
 朝にコンクウイスキーが配られた。これは、恒例となっているらしく、銘柄はニッカの鶴でアルコール度数は58.5度。強烈!

コンクと支給を受ける隊員コンクと支給を受ける隊員

コンクと支給を受ける隊員

 着実に前進している。様々な上陸に関しての準備が進んでいる。しらせのヘリコプター、観測隊持込のヘリコプター(リトルブルー)のブレード装着が終了。飛行訓練も行なわれ準備完了。

海上自衛隊ヘリ観測隊ヘリ(リトルブルー)

海上自衛隊ヘリ

観測隊ヘリ(リトルブルー)

 今日は、しらせ、観測隊合同の懇親会が開催された。
 大いに親睦が図られたが、しらせ側は士官クラスの参加であるため、それ以下の人とはなかなか交流が深められないのも、少し寂しい気がする。観測隊も地学のグループが、明日、調査に出発し、2月上旬まで調査をしてくる為、全体がそろっているのは今日が最後。いままで当然のように全体で行動していたのが、これからはそれぞれの観測が行なわれる。2月1日になると我々も、越冬交代が行なわれ昭和基地の管理を任せられ、越冬の実質の始まりである。いよいよそこには南極大陸が待っている。

12月17日(金)

 本日南緯68度09分、東経38度21分通過。
 氷の状態が厚く、チャージング(行ったり来たりで氷を割って進んでいく)が始まった。去年は一度も無かったと聞いているが、今年も無いだろうと言われていたため残念と思っていたのが、朝から妙に進むスピードが遅くなり、氷を割る音もすごくなり、何かなと艦橋に行ってみるとチャージングが始まっていた、前進しては止まり、そして後退して勢いをつけてまた前進。3歩進んで2歩下がりまた3歩進むみたいに、着実に前進している。しらせは1万9千トンあるにも関わらず氷が割れない!

前方で氷を割る(チャージング中)後方スクリューで氷を蹴散らす

前方で氷を割る(チャージング中)

後方スクリューで氷を蹴散らす

 多分相当の氷の厚さ。さすがに南極が近づいているし自然界の凄さも感じながら、人間の小ささも感じる。
 また今日の午後に夏隊の地学グループ6名が調査地にヘリで出発。約2ヶ月の野外調査。そのまましらせに2月10日前後に帰ってくるため私たちとは後は逢わないことになっている。怪我なく、無事に、頑張って観測してきて下さい。私たちも明日、いよいよ南極大陸に上陸。夏宿というところで生活を始める。昭和基地管理棟には45次隊越冬隊が越冬中の為まだ入居できないが、1月31日までここで暮らすことになる。さぁー憧れの南極大陸に到着。

12月18日(土)

 いよいよ昭和基地に向け出発の日が来ました。
 しらせに乗船したのが12月3日。約2週間という長い期間南極大陸に向けフリーマントルから出航したのがつい昨日のような感覚です。事前情報では海氷が薄く今年もチャージングが無いだろうと言われて居たのですが、昨日の夜から氷が厚くなりチャージングが開始。氷に乗り上げては止まり、後進し勢いをつけて再度前進。また氷に乗り上げては止まり、また後退。この繰り返しで少しずつ前進してきました。相当な回数のチャージングです。実際に肉眼で海氷の厚さを見てみるとなかなかの厚さで、氷の厚さを測定している計測器によると、4m位の厚さのある海氷もありました。チャージングを約400回しながら前進し、昭和基地から約50マイル地点からしらせのヘリコプターで数回に分けて観測隊員が昭和基地へ上陸しました。

ヘリから見た氷山群ヘリから見た南極大陸

ヘリから見た氷山群

ヘリから見た南極大陸

 いよいよここが南極大陸、昭和基地。テレビでしか見たことのない、あの南極大陸の地に降り立った訳です。初めて見る昭和基地、とその周辺は想像とは多少異なりますが、ここは本当にあの昭和基地なのかと不思議な気持ち、感覚です。45次越冬隊の仲間も約10ヶ月ぶりに仲間以外の人と逢うわけですから、彼ら達もおおいに感激しながらの大歓迎で和太鼓で出迎えてくれました。

45次隊の歓迎出迎えてくれた45次隊

45次隊の歓迎

出迎えてくれた45次隊

 南極は今、まさに夏であり、気温もプラス2~5度くらいの天候のいい状態です。稚内の今の気温より、全然暖かい状況です。周りにはさすがに、民家も当たり前のごとく無く、また人間も観測隊員しか居ません。ここは、間違いなく日本から14000キロ離れた南極大陸です。

12月19日(日)

 今日は、昭和基地の各種施設の探索とこの夏オペレーションで行なう工事現場等の下見をしました。

 南極の状況は、当たり前のように、コンクリートや、アスファルトで舗装された環境で生活してきたとは全く訳の違う環境です。道路は全く舗装されてはなく、ごつごつした石が転がっている状況で、簡単に表現すると「荒野」という言葉がぴったりする環境です。それと全く緑色が無いことも特徴です
 想像ですが、火星に近いかもしれません。あたり一面、赤茶けた色しかありません。もう一つあるのは、観測機器と、昭和基地の各種の管理棟があり、多少の色が付いているだけで、何にもありません。

夏宿から見た南極大陸景色夏宿から見た南極大陸景色

夏宿から見た南極大陸景色

 今日は、これから私達が暮らす第1夏宿について簡単に説明します。
 この施設は、当該年の観測隊が夏期間(12月~1月31日)の作業をしている間に生活をするところです。

第1夏宿(レークサイドホテル)全景第1夏宿(レークサイドホテル)全景

第1夏宿(レークサイドホテル)全景

(通称「レークサイドホテル」写真有り)昭和基地の管理棟(主要部)には全次隊の越冬隊が生活しています。ですから毎年この時期には二つの隊が昭和基地にいることになっています。2月1日に越冬交代ということで、今次隊(46次隊)が全次隊(45次隊)に変わって昭和の主になるわけです。

昭和基地、管理棟前でポーズこれが昭和基地管理棟

昭和基地、管理棟前でポーズ

これが昭和基地管理棟

 ちなみに、今は「白夜」といって太陽が沈まない期間です。一日中外は明るく感覚的にはとても妙な感覚です。しかし、この反対で「極夜」という太陽が全く登らない期間もあります。
 これが南極なのです。

12月20日(月)

 今日は、午前中に氷上輸送安全講習を45次隊の担当者から受けました。これは私達が乗ってきたしらせがまもなく昭和沖に着岸します。しらせには様々な観測機器等が積み込まれています。事前にヘリコプターで緊急物資は運びましたが、その他のヘリで運びきれない大型の物資(雪上車(約11トン)、油タンク、大型コンテナ)や、食料、私達の生活用品等については海氷の上を雪上車で昭和基地に輸送しなければなりません。しかし、この輸送している場所は間違いなく道路ではなく、海の上なのです。ですから氷の状態の変化を確実にとらえ、より安全なルートを見つけて運ばなければならないのです。パドル、タイドクラックなど危険な場所があちらこちらに既に出来ています。今年は昨年以上に昭和基地付近の海氷状態が薄く、1週間程度しか氷が持たないと予想されて居ます。私達はある意味、命賭で輸送をしていると言っても過言ではありません。
 22日にはしらせが着岸予定となっており氷の状態があまりのも良くない為、海氷が解けない深夜に行なう事も検討されています。南極は、今、白夜を迎え、日が全く沈まない時期であり真夏?に向かっています。当然(写真のとおり)雪も解けてほとんど無くなっています。こんな状況の中での作業は本当に大変です。
 ここは、間違いなく南極大陸です。

12月21日(火)

 しらせがやっと着岸しました。氷上輸送の本格的な始動です。

着岸したしらせ

着岸したしらせ

 大型物資を安全に運ぶために深夜から早朝にかけて行ないました。昼間の気温が晴れになるとプラス2~5度近く上昇し、海氷がどんどん溶け出します。今日もパドルがあちらこちらで広がり、気持ちのいいものではありません。例年より海氷が薄いため、ルートを最短距離に変更し、みはらし岬に上陸をさせ、後は陸送します。私達のしらせに積み込んだ荷物約、1000トンを全て運び出すのも重要な仕事です。
 さて、今日は45次越冬隊が主催する歓迎会が開催されました

松原隊長・渡邉越冬隊長の挨拶松原隊長・渡邉越冬隊長の挨拶

松原隊長・渡邉越冬隊長の挨拶

 両隊が一同に会する初めての行事です。さすがに45次隊は越冬を経験してきたせいか、顔の色はほとんどが黒く、ひげもかなり伸ばしている人も多く何かたくましく見えます。さすがにこの南極生活(厳しい冬)を乗り切っただけあると関心。我々も47次隊を迎える時にはこうなっているのかな・・・
 昼間はプラス気温で本当にここは南極?と思うようなぽかぽか陽気、感覚的にはある意味北海道の雪解け時期に似ています。まだ、南極を肌身に感じられませんが、我々の仲間がドームふじ基地で業務をしていますが、そこは常時マイナス30度以上になっています。そこと比較するとまだ快適な環境です。
 今日から1週間程度、深夜から早朝の輸送が続きます。勤務態勢も夜型(8時に寝て夕方起床)に変わります。この1週間はきつい勤務になりますが、何とかみんなで乗りきりたいと思います。

12月22日(水)

 夜間の氷上輸送22日目。さすがに昼夜が逆転するとしんどい・・がしかし、外はいつ見ても昼間の明るさ。いったい今は何時?と時計を見て再確認!夜中なんだと・・・仕事終了が朝の7時。夏宿に帰って食べるのが朝食なんですが、夕食と錯覚してしまいます。看護師の夜勤の大変さが身にしみて解ります。
 2日目の氷上輸送は、日中天候がよくプラス5度くらいまで気温が上昇。そうすると海氷がどんどん解けてパドルがどんどん広がっていき、気持ちのいい物ではありません。ここは海の上。水深約250mの上で輸送をしています。  
 私は、しらせのクレーンから荷下ろしされてくる荷物をSM20いう小型の雪上車で中型雪上車(SM40)のところまで牽引していく担当です。
 観測隊員は約7割がこの輸送業務をしています。普段、研究を主にしている隊員はこの肉体労働にかなり疲労がたまっているように感じます。顔に疲労感が・・・・
 私も多少疲れていますが、体力には自信?がありますので頑張ります・・・

荷物をおろすしらせ

荷物をおろすしらせ

12月23日(木)

 今日も氷上輸送!最近は天候が良くどんどん海氷が解けていきパドルもどんどん広がっていっています。その上を雪上書で輸送しなければばらないので緊張感があります。雪上車は約4トンありますから余り雪上車同士が接近しすぎると海氷に与える影響が強いため、車間距離を50M以上とって、安全を保って輸送します。事故が起きてからでは遅いのです。慎重に慎重を期して輸送を行なっています。

氷上輸送氷上輸送

氷上輸送

 この氷上輸送もあと4日程度で終了しますが、その後45次隊の持帰り物品の積込みがありますが、この輸送の方が非常に危険で、雪上車の輸送ルートを探すのだけでも大変で、危険を伴っています。

白夜の中の雪上車横に移動する太陽と氷山

白夜の中の雪上車

横に移動する太陽と氷山

12月24日(金)

 本日は、氷上輸送が休日。昨日の輸送終了後、朝の9時過ぎに睡眠をとって15時頃起床!今日はクリスマスイブ。ディナーも調理担当が腕をふるって大変豪華なディナーを作ってくれました。

ささやかなクリスマスディナー

ささやかなクリスマスディナー

 しかし、外を見ると明るさが昼間と全然変わらず、さんさんと太陽が照っているし、雪は降っていないは、全然クリスマスらしさがありません。こんなクリスマスは生まれて初めてです。
 でも、こんな南極で迎えるクリスマス、来年あと1回同じクリスマスを迎えますが、越冬を終えてしらせが迎えに来ている中でのクリスマスはいったいどんな気持ちなんだろう・・・
 一時の休日を過ぎればまた明日から夜勤です。頑張ります。

12月25日(土)

 今日も、深夜の氷上輸送。搬出は順調に進み、多分明日で深夜の運び出し輸送が終了する予定。今度は45次隊の持帰り物品が始まります。しかし、この数日間で氷上のルートは溶け出して相当痛み、パドルがいたるところに発生し、どんどん広がっている状況です。いずれにしても、氷上輸送は危険と紙一重。
 最後まで気を引き締めて行なわなければなりません。
 また、輸送と平行して日中行なわれている各現場も観測隊員が普段することのない、なれない作業を一生懸命行なっています。
 日に日に、各隊員の顔が日に焼け真っ黒になり、どんどん精悍になっていって居ます。自分も、顔が真っ黒・・・いったい誰?

氷上輸送中の自分と雪上車

氷上輸送中の自分と雪上車

12月26日(日)

 本日をもって、夜間の氷上輸送が終了しました。お疲れ様でした。
 引き続き45次隊の持帰り物品の氷上輸送が始まりました。海氷状況が日に日に解けて悪くなる中での輸送ですから非常に危険を伴いながらの業務。ちなみに来年は我々が同じ状況で行なうのかと考えると非常に不安です。
 明日から通常業務に戻ります。夜勤感覚が染みついた感じがして、朝が起きられるかどうか・・・

氷上輸送中の雪上車

氷上輸送中の雪上車

12月27日(月)

 今日は、昨日の夜間作業により本日は、深夜空けにより休みでした。久しぶりの休養になりました。少し昼夜の感覚がなくなり、まして外はいつ見ても昼間のような明るさ・・・疲れが多少出たかな・・・しかし夏オペレーションは始まったばかり。
 休日は洗濯もしなければなりません。こちらでは水が貴重で、雪解け水で水を作っているため、かなり節水を心がけています。洗う水は洗濯物がひたひたになる程度、洗剤は少なめ。一度洗ったら脱水。脱水後、またひたひたになる程度の水で洗い、脱水して完了。こうして節水しています。水だけでは無く電気も同じです。日本に居ると当たり前のように電気、水を使っていましたが節電、節水を日常心がけています。
 ここは、南極なのです。

12月28日(火)

 今日は少し体調を崩しかけていたので、ドクターストップがかかり、一日休養をしました。
 氷上輸送の深夜勤務といろいろな緊張感で多少疲れがでたかなと自分ながら反省をしています。一人が夏作業から外れるとそのぶん作業効率がマイナスになります。他の隊員にも迷惑を掛けることになります。これからは体調管理をしっかりしないと、しきりに反省をしています。
 夏宿の中の仕事も意外にあって、当直が2名当番制で行ないます。食事の配膳、後かたづけ、掃除(トイレ、風呂、廊下、玄関等)なかなかのボリュームです。総勢43名程度が生活をしているわけですから。その手伝いを自分ながら反省を込めて一日行ないました。明日は、外作業頑張ります。

12月29日(水)

 今日は、昨日感謝していた当直が自分に回ってきました。
 当直業務は、前日紹介したとおり団体生活(合宿生活)には欠かせない業務です。朝の朝食準備から始まり、最後は夕食の後かたづけで当直業務は終了。

12月30日(木)

 朝、8時から現場作業に復帰。今日は車庫建設現場での鉄筋の基礎づくりを行ないました。

捨コンの上の鉄筋型枠づくり

捨コンの上の鉄筋

型枠づくり

 何せ、このような作業は生まれて初めての経験ですので、なかなか大変ながらもおもしろく感じながら作業をしました。通常日本では、専門の建築関係のプロが行なう事を、この南極では私達(素人)が行なわなければなりません。
 現場監督は相当やりづらいとは思いますが、何とか2月上旬くらいまで完成させなければなりませんので、私達よりある意味緊張感を持っていると思います。このような夏期間でしかできないオペレーション(建設、修理業務)が約2月半という短い期間ですので、「しらせ」の乗組員に応援(支援)を毎年もらって居ます。今年も支援は、1月2日より開始されます。毎日約16名の支援組が3泊44日の短期出張(?)でしらせより第1夏宿に出稼ぎに来ます。お互いに協力しあって完成にむけて頑張らなければなりません。
 ちなみに、明日は大晦日ですが、私達は日本に居たときはゆっくりテレビをみながら、年越しそばを食べて過ごしているのが通例でしたが、これとは全く関係なく現場作業が待っています。
 その作業も3時くらいで終了し、夕方よりしらせに全員で行き、年末、年始を迎えることになっています。ひとときのお正月を味わいたいと思います。

12月31日(金)

 今日は大晦日。しかし我々は朝から、ひき続き現場作業です。昨日と同じ車庫の基礎づくりの続きです。
 自分としてはなかなか型枠づくりの要領も得て、スムーズにこなしています。また鉄筋の運搬から、細かい材料の運搬も手なれてきました。

基礎型枠つくり基礎型枠つくり

基礎型枠つくり

 大晦日ということで、今日はしらせに宿泊して、年越しそばを食べるために15時に昭和沖に停泊しているしらせに観測隊全員で海氷上を徒歩で向かいました。

しらせに向かう観測隊員とパドル郡
しらせに向かう観測隊員とパドル郡

 さすがに南極でも夏になるとプラス気温が毎日続きますので日に日に海氷が溶け出し、雪上車では、非常に危険な状況になった為、歩かざるを得なくなったのです。
 無事、全員しらせに到着し、夕食(年越しそば付き)を食べたのでした。また、恒例の甲板上に露天風呂なるものが出現し、観測隊員は物珍しげに入浴。しかし、水は海水ですけど・・・南極でそれも大晦日にしらせの甲板で露天風呂?こんな経験(シュチエーション)はそうできるものではありません。観測隊員も満足・・・

露天風呂に満足の観測隊員

露天風呂に満足の観測隊員

 夕食後、観測隊員、しらせ乗員とでの新年を迎える交流がささやかに開催され、正月気分?満喫?しました。
 この一年を振り返って見ると、私にとって人生の転機とも言うべきこと、南極観測隊員に選ばれ、6月末より東京での単身赴任での勤務を5ヶ月。11月28日に南極に向けて成田空港を出発。12月18日に南極昭和基地に上陸。そして、南極で年を越そうとしています。
 本当に未だに信じられないと状況にあります。ここまで、様々な関係者のご協力、ご支援を頂き今日を迎えることが出来ました。本当に心から感謝をし、この2004年を本当の感謝の気持ちで終えたいと思います。

第46次日本南極地域観測隊 越冬庶務 近江


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