サハリンプロジェクトの現況
サハリン1(S-1)の現況
新日本製鐵株式会社が、チャイヴォ・オドプト鉱区から海底及び陸上のパイプラインでサハリン島を横断し、間宮(タタール)海峡を経て、原油貯蔵出荷基地である大陸側のデカストリに至る、延長220Kmの原油パイプラインの敷設工事を約600億円で受注したと伝えられています。同社は工事を既に完了しており、サハリン島からは撤退している状況にあります。
パイプラインのパイプについては、陸上部分はロシア製、海底部分は日本製が使用されることとなっており、日本部分についてはNKK、川鉄が受注しています。
海底部分に使うパイプについては、製鐵所近郊の港(和歌山、君津等)の港からマレーシア(クアンタン)に運び、コンクリートコーティングを施した後に現場へ運搬されています。
この運搬に関連して、工事に関係するイタリアのパイプ敷設施工会社サイペムから傭船会社CMCへの発注があったことから、その「中継港として稚内港の利用」が取り沙汰されていたものの、“ローカルコンテンツ”(*)への対応からワニノ港や、ハバロフスク近郊のボストーチヌイ港等のロシア側の港が使用された経過があります。
サハリン2(S-2)の現況
サハリン2(S-2)の“第一段階”(フェーズ1)では、洋上の施設に石油を備蓄し、周辺海域が凍りに閉ざされない季節限定で石油を出荷する段階に到達しました。1999年から出荷が始まり、2008年9月までに通算1億バレルの出荷を行いました。
現在、“第2段階”(フェーズ2)の進捗により、“第一段階”(フェーズ1)で設けられた洋上の石油備蓄施設は、その役目を終えました。2008年12月までに、サハリンを南北に縦断する総延長800kmのパイプラインが使用可能となったことから、石油はパイプラインでプリゴロドノエに送り込まれ、プリゴロドノエの施設でタンカーに積込んで年間を通じて出荷可能な体制となりました。2008年12月、このプリゴロドノエの施設から最初の石油タンカーが出航しました。
石油用と併設されている天然ガス用のパイプラインも使用可能となりました。天然ガスはプリゴロドノエの液化天然ガス(LNG)(*)工場に送り込まれ、専用船で各地へ出荷され始めています。
ロシアは天然ガス産出国として知られていますが、これまでは専らパイプラインで送り出す方式で利用していました。液化天然ガス(LNG)(*)工場は、このプリゴロドノエのものがロシアでは初めての例となります。
(公表されているLNGの供給契約)
相手先 | 年間供給量 | 供給年次 | 期間 |
九州電力 | 50万トン | 2010~2030 | 21年間 |
東京電力 | 150万トン | 2007~2028 | 22年間 |
東京ガス | 110万トン | 2007~2030 | 24年間 |
東邦ガス | 50万トン | 2009~2032 | 24年間 |
メキシコ | 37万トン | 2008~2027 | 20年間 |
韓国 | 150万トン | 2008~2027 | 20年間 |
東北電力 | 42万トン | 2010~2029 | 20年間 |
広島ガス | 21万トン | 2008~2027 | 20年間 |
大阪ガス | 20万トン | 2008~2030 | 23年間 |
年間生産可能量 計 630万トン /960万トン
液化天然ガス(LNG)(*)を製造する装置は、「長大な外観形状が列車を思わせる」ことから“トレイン”と呼ばれています。プリゴロドノエにはこの“トレイン”が2つ備えられています。
この2つの“トレイン”では年間最大960万トンの液化天然ガス(LNG)を製造することが可能です。全生産量の6割程度は、日本の需要家向けに販売されるそうです。
2009年4月、ロシアで初めてのLNG工場から出荷されたLNGが、東京湾の袖ヶ浦に届いたというニュースが伝えられました。
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