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友好都市職員研修受入(2014年7月8日~14日)

稚内市立図書館内を見学するサハリンの友好都市から来た図書館職員。稚内市では、サハリンの3つの友好都市(ネベリスク市、コルサコフ市、ユジノサハリンスク市)から職員を迎え入れ、担当分野の業務の様子に関して話し合ったり、様々な現場視察を行う「友好都市職員研修受入」を行っています。

近年は「○○分野は如何でしょうか?」と各市の皆さんと協議を行い、各分野の担当職員を稚内に迎えています。稚内でも、それぞれの分野の担当職員が御案内をします。今年は図書館がテーマとなり、サハリン各友好都市の図書館で仕事をしている方達(各市1名で計3名)が稚内にやって来ました。

サハリンでは、或いはロシアでは「図書館」と言えば「女性の職場」というイメージなのだそうです。サハリンの図書館では、男性の職員、関係者を見掛けることは殆ど無いそうです。(稚内市立図書館に勤務する職員は、概ね男女半々です。)そういうことで、今回は各市の図書館で仕事をする3人の女性が稚内にやって来ました。

サハリンの各市では、「本館・分館」を含めて、管轄区域内に在る「市立の図書館機能を有する施設全般」をもって“図書館システム”と呼ばれる職場、或いは行政機構上の一部門と見做されます。今回訪れた皆さんも、各々が各市の“図書館システム”の所属になります。日本では市町村という基礎自治体ですが、サハリンでは「市と周辺の町村に相当する部分」を包括する“地区”という概念が在り、その“地区”が基礎自治体となります。ユジノサハリンスクに関しては、“地区”と呼ばずに“市”と呼んでいますが、ネべリスクやコルサコフと同様な原則です。ユジノサハリンスクでは図書館の本館・分館が合わせて20在り、その他に州立図書館や他の図書館も在るそうです。コルサコフでは“地区”の本館・分館が13、ネべリスクでは8とのことです。

永く続けている「友好都市の職員の皆さんをお招きして、様々な現場に接して頂く」という取組そのものも、例が在りそうで無いものなのかもしれませんが、永く図書館の仕事に携わっている皆さんにとっても、こうした型で「外国でもある稚内の図書館を視て、現場の皆さんのお話しを聴く」というのは初めてのことで、大変な意欲を持って稚内市立図書館を訪ねました。

図書館のあらましなどに関して熱心に話し合う様子。稚内市立図書館のあらましについて、「今年4月1日現在のデータですが、142,815人の来館者が在り、1日平均で500名程です。昨年度の年間貸出数は197,317冊で市民一人あたりでは5.3冊になり…」と話し始めれば「一寸待って下さい」と質問が出ます。「その種の統計データはどのようにして得ているのでしょうか?」と問われ、「来館者の中、開架式書庫に出入りする皆さんはゲートの機器で自動的に数えられる仕組みになっています。ゲートを潜らない、多目的ホール等の利用者も居るので、来館する皆さんの数はもう少し多い筈です。本の貸出については、“貸出システム”で直ぐに数等の統計的データを参照出来ます」と答えれば、「“貸出システム”はウェブサイトと連動している物なのでしょうか?」、「“システム”の前提になる“電子カタログ”は誰がどのように整備するのでしょうか?」、「あそこの開架式書庫に本が並ぶ前に、番号を貼るような作業はどのように行っているのでしょうか?」、「館の保安体制は?勝手に本を持帰ろうとする人が居たらどうするのでしょうか?」、「図書館で扱うのは書籍が主流でしょうが、雑誌や新聞はどういう種類の物を何部程度用意するのでしょうか?オーディオソフトは扱っているのでしょうか?それらは貸出しているのでしょうか?」、「3年間とか10年間とか、貸出実績が無いような本はどういう具合に扱うのでしょうか?」等々と質問が文字どおりに次々と飛び出し、それらが全く途切れません。圧倒される程に熱心な皆さんで、朝の開館時間辺りから始めて「気付いた時には昼休みの半ば近く」という勢いでした。

移動図書館車<ぶっくくん>を視察している様子。大変に熱心に話し合った他方で、稚内市立図書館の館内、移動図書館車<ぶっくくん>、稚内東中学校の学校図書館も熱心に視察しました。殊に稚内市立図書館の館内は熱心でしたし、「稚内市立図書館と学校図書館の連携」というテーマにも強い関心を示していました。また「稚内市内では最も新しい校舎」ということになる稚内東中学校のオープンスペースに設けられた学校図書館に関しては、サハリンで類例が思い当たらない物であるようで、非常に熱心に見学していました。

彼らが稚内市立図書館を訪ねた時、児童を対象にした絵本の「読み聞かせ」が催されていました。彼らもその場に入って様子を視ていましたが「多くの親子連れが立寄っていて、子ども達が静かに座って聴いている様子が大変に好ましいものに思えました」という感想を漏らしていました。更に「開架式の非常に快適な空間が創られていて、利用し易い雰囲気が好ましいと思います」というようにも付け加えていました。

ロシアでは“図書館”と言う場合、所謂「閉架式」の、「引き出しにぎっしり詰まった“カード”を探すか、“電子カタログ”で探すかした本を係員に申込み、奥の書庫から持って来て貰って、閲覧室で読む」というイメージが強いそうです。しかし、最近は稚内市立図書館等、日本の公立図書館に見受けられる“開架式”への改装が進んでいるとのことです。サハリンでは、「何かの建物の一部を図書館として利用」という事例が圧倒的で、「新たに図書館を建設」というのは、地震災害で公共施設が損なわれたことから色々な施設が新築されたネべリスクの例が在る程度であると言います。

児童を対象とした読み聞かせを視ている様子。サハリン各市の図書館では、本の貸出や閲覧の場を供するという、彼らの表現を借りると「純粋な“図書館機能”」に関する役目の外に、児童・生徒から市民一般を対象にした様々な課題に関する啓発活動、郷土に縁の文化人の事績を伝える活動等にもかなりのエネルギーを割いているそうです。そうした「図書館での催事」に関しても熱心に話し合いましたが、稚内で見受けられる<図書館友の会>に関しては絶賛していました。

サハリン各市の図書館では、ウェブサイトを通じた情報発信に力を注いでいます。「図書館のウェブサイト」と聞けば、“貸出システム”とも連動している、収蔵図書の状況や貸出可能であるか否か等が判るようになっている部分と、催事のお報せ等を中心とした部分から成るものを思い浮かべます。サハリン各市のウェブサイトでは、街の歴史に関係する収蔵図書を紹介するコーナーが在ったり、街の図書館の歴史を古い写真付きで紹介するコーナーが設けられているなど、少し内容が厚い感じがします。これも「郷土に纏わる各種資料の収集、紹介」ということが、図書館の役目の一つと考えられているからなのだそうです。

自分たちのウェブサイトを示しながら、ウェブサイトに関する意見交換を行っている様子。図書館での研修そのものの外、彼らは旺盛な好奇心を発揮して、空いていた時間には積極的に宿の近隣等を動き回っていました。研修であれ、そうした自由時間であれ、随分と積極的に写真や動画に視た様子を収めていた様子でしたが、帰国後は同僚や家族や友人への土産話のタネは尽きないことでしょう。

彼らは「彼我の比較で気付いたことが多く在り、今後の業務に活かせることでしょう」と一様に話していましたが、稚内市立図書館の側でも、彼らとの話し合いの中から得たヒントをこれからの取組に活かせそうであると感じられる場面が多く在りました。

各市の皆さんは、恐らくなかなか尽きない程度の土産話のタネと、若干の土産物を手にフェリーで帰国の途に就きました。


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