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第46次南極地域観測隊 近江隊員の南極滞在記(2005年7月分)

7月1日(金)

(天候:ふぶき一時曇・最大瞬間風速:14.3m/s・気温(最高:-7.3℃ 最低:-15.1℃))

 南極の天候は凄まじい勢いで変化します。今日は昨晩の気象隊員の予報で荒れた天気がという話どおり朝から20m/s以上の風が吹き、雪を伴っていましたので、視界が相当悪い状況で、午前10時30分に外出注意の発令がされたわけですが、その後も一向に弱まる傾向ではなく更に風が強まってきたのです。 
 庶務室で聞こえてくる「音」が一段と高まり風速計は30m/sまでに到達していました。この時点での気象隊員の予報ではこの状態のピークは21時頃になるだろうということでしたので、外出禁止も間近と思われていました。16時50分外出禁止がとうとう発令されたのです。風速計の記録の軌跡を見ると昨日の状態からジャンプアップしていることがよくわかります。しかし風が強い分気温が思った以上に下がらず6月中にマイナス32.8℃を一度記録しただけで気温は高く推移しています。また降雪も例年より相当少なくなっており、水の心配をするほどになっています。
 いずれにせよ、あっという間に状況が変化する南極の天候には充分気を付けなければならないことを改めて知らされたのです。

またまたブリザード・・・
(またまたブリザード・・・)

 さて今日より7月に入り、越生活の半分が経過したところです。日本では47次隊隊員室が開設され、今後、それぞれの動きが活発になってきます。今日は全体会議が開催され、その中で、7月の行動計画も確認されましたが、特に極夜期を明け野外活動が盛んに行なわれる計画となっています。
 極夜期が明けるとは言え、まだまだ厳冬期間です。越冬生活の半分を消化してくる頃に事故が多くなるといわれています。気持ち的にも余裕が出てきてはいますが、初心を忘れず気を引き締めて後半戦に突入です。

全体会議
(全体会議で7月の計画が審議されています)

7月2日(土)

(天候:ふぶき後雪・最大瞬間風速:34.0m/s・気温(最高:-7.2℃ 最低:-13.1℃))

 今日は休日日課ではない土曜日。特に行事も、野外活動も無く平和な一日となりました。
 毎週土曜日の夕食後に、もやし出荷のための通称「もぎり」(根と黄色い葉の部分を一本一本手でもぎる)が行なわれます。そのままでも食べることも出来るのですが一応「製品」としての出荷ですから、より良いもやしとして食べてもらうための最後のお手入れといったところでしょうか・・・農協係のメンツもありますけど・・・
 最近の「もやし」の状況は、種の量を始めとする栽培方法が一定化して毎回同じくらいの大きさのもやしが収穫されます。
 市販されているのよりは多少小さい程度で何ら問題ないもやしになっています。もう一つの「カイワレ」も全く問題ない出来となっており、両方とも欠かせない食料の一つとなっています。

もやし その1
もやし その2
(見事なかいわれ、もやしです)

 また農協係長が何やら「きゅうり」らしきものを栽培しているらしく、まだ「実」
はできていなさそうですが、青々とした「葉」が野菜栽培機の中で確認されています。越冬中にはきゅうりも食べることができるのを期待しています。
 ミッドウインター実行委員会の遅ればせながらの打ち上げが20時より開催されました。実行委員長から「御苦労様」の声と同時に乾杯!ところがミッドウインターのことはほとんど語られず、この次は何をしようか?花火大会?再び露天風呂?などの話題で盛り上がり、さすが、ポジティブな観測隊。常に前を向いて驀進するところがさすがです。

お疲れ様でしたぁ~
(お疲れ様でしたぁ~)

7月3日(日)

(天候:曇一時雪後一時晴・最大瞬間風速:16.6m/s・気温(最高:-12.7℃ 最低:-17.7℃))

 今日は休日日課でしたが、天候が比較的穏やかであったため、野外での活動が行われ、一つはとっつき岬までのルートの確認ともう一つはラングホブデ方面のルート工作が初めて行なわれました。このラング方面のルートは今後の活動で頻繁に使われるルートとなり重要なルートとして位置づけられることになるそうです。

ラング方面のルート工作
とっつき岬にある雪上車の点検
(ラング方面のルート工作)
(とっつき岬にある雪上車の点検です)

 このように天候が穏やかになり野外活動が出来る条件になったらどんどん行なって行かなければなりません。天候の崩れ方が日本とはまるで違いますから、一旦崩れだしブリザードになると外出は殆ど不可能になり作業も中断してしまいます。
 私たちには時間が限られていますし、この期間内で行なわなければならない計画が数多くありますので、出来るときに行動をするというのがここでは当たり前になっているのです。休日日課と言っても気を抜けないのがここでの基本となっています。

7月4日(月)

(天候:ふぶき・最大瞬間風速:43.0m/s・気温(最高:-8.1℃ 最低:-14.8℃))

 今日の午前中より風が強まってきて外出注意が発令。予報ではピークは今日の深夜を予想しているとのことで、ますます風、雪が強まり外はほとんど視界がなくなってきていましたので、外出禁止も発令されました。風は40m/sを頻繁に超える状況です。外の様子はますますひどくなり、私が見てきた中での最高のブリザードです。本当に凄まじいという言葉以上です。(あまりに凄すぎて写真を撮ることが出来ませんでした)気象隊員も46次隊が越冬してから最高のブリザードでしょうとも言っていましたが、なんとも凄い状況です。明日は今日よりは回復する見込みだそうですが、どうなることでしょう。
 ちなみに外出禁止で各観測棟から管理棟に帰ってくることが出来なくなった隊員が6名。非常食は常備されていますので、数日間、問題はないのですが・・・
 ちなみに気圧は957ヘクトパスカルを記録していました。(台風の出来立て並みです)
 さて月曜日と言えば南極大学ですが、いよいよ本日が最終回となりました。何と学長が運よくというか偶然と言うか一番最後の講師となっており、なかなかのシチュエーションです。お題は「くすくす焼却炉の着火」でさすが環境保全担当。この「くすくす君」とは基地にある焼却炉のことで、煙を出さずに燃えるゴミを処理し、空気を汚さないようにする環境にやさしいゴミ焼却炉です。この説明を中心の講義内容でした。

最後の講師です
(最後の講師です)

 その後、南極大学の卒業証書が全員に学長から手渡されました。最後に学長が「これでこの歴史的な南極大学を無事に閉校することができ、また47次隊に引き継げることをうれしく思います。」記録によると1次隊から始まっているこの南極大学。それぞれの隊でそれぞれの内容で行われてきたこの大学。1次隊の大先輩が46次隊の南極大学を見たら多分、信じられないと言うに違いありません。しかし近代的なPC等を駆使して行なわれようとも個人が皆に「伝える」と言うことは変わっていません。この「南極大学」で隊員の出身地や今までの経験談など様々なことを知ることが出来、非常に良い企画であったと思っています。過去の諸先輩も閉校に当たっては同じ思いを持ったに違いないと思います。それだけ印象に残るものでした。
 これでまた、思い出の1ページに新たな書込みが増えました。

学長の挨拶
越冬隊長も卒業証書を貰いました
(学長の挨拶です)
(越冬隊長も卒業証書を貰いました)
私はビデオ撮影しながらです
卒業生を代表しての挨拶です
(私はビデオ撮影しながらです)
(卒業生を代表しての挨拶です)

7月5日(火)

(天候:ふぶき・最大瞬間風速:45.7m/s・気温(最高:-7.7℃ 最低:-10.3℃))

 昨日から続いているブリザードが収まる気配どころか、ますます強烈になってきています。4日の最大平均風速が34.3m/sで、瞬間では43m/sを記録。 
 そして今日は最大平均で35.8m/s、瞬間45.7m/sと、とてつもない風が吹いており、その強風に降雪と舞い上がる雪が見事に入り混じり、視界はほとんどセロに近く管理棟の3階の高いところから見ても、うっすら一番近外灯が見えるか見えないか程度の猛烈なブリザードです。多分、目線の高さではおそらく全く何も見えない状況です。越冬して今までで最大級のブリザードになっています。(昨日より凄いです)
 非常ドアをほんの少し開けて見てみたのですが、見た瞬間に恐ろしさを感じたほどの物凄さでした。明日には回復するような予報となっていましたが、庶務室にもあの音が一段と聞こえてきます。バタバタ、グラグラが入り乱れてではなく同時に聞こえてきます。ある隊員がこの管理棟はどれほどの風速に耐えられるのか?その言葉に私もふと、心配に・・・しかし今までの昭和基地でのデーターを基に設計施工されているはずですから大丈夫なんでしょう。でもただでさえ自然の恐ろしさに私たち人間は、さまざまな自然災害に痛い目にあってきていますし、特に南極の凄まじい自然環境は人間の計算では考えられないことが起こりうるところですから「絶対」と言う言葉は成り立ちません。
 この二日間のブリザード。A級として認定されるでしょうが、私の記憶にも超A級として刻み込まれたそんなブリザードでした。

7月6日(水)

(天候:ふぶき後曇・最大瞬間風速:35.3m/s・気温(最高:-9.7℃ 最低:-13.5℃))

 ようやくブリザードが収まりました。45m/sを超える風がまるで嘘だったかのように天候が回復しましたが、それにしても本当に凄いブリザードだったと改めて感じています。
 このブリザード後に必ず凄い吹き溜まり(ドリフト)があらゆるところに出来ています。この吹き溜まりを取り除く作業があらゆるところで始まります。 
 各観測棟の入口がほとんど埋もれてしまっていますので、先ずその除雪をしなければ入ることができません。朝から一生懸命除雪です。ブルドーザー2台もフル回転で、管理棟周辺の除雪が行なわれます。その他に、野外での作業や観測もストップしていましたので、待ってましたかのように出発します。このように、ブリザード(外出制限を伴うもの)は観測隊にとって余り歓迎はされませんが、南極ではブリザードが付き物ですので、イライラせず旨く付き合っていくことも重要です。
 7月から野外での活動が盛んになり、特に宿泊を伴うものでは医療隊員が同行しない場合がありますので、いざと言うときのために救急セットも常備していますが、もし不幸にも怪我が発生したとき、この救急セットのものを使いどんな応急措置をしたらいいのかと言うことも非常に大切です。打撲、切り傷などは簡単に対処出来ますが、骨折や凍傷も想定できます。このような大きな怪我は最初の措置がとても大切ですから、その基本を講習しました。これは日本で数回訓練等、勉強はしてきてはいますが、なかなか身に付くものではありません。このように定期的にタイムリー的に講習をしておき、いざと言うときに役立てることが大切です。
 でも、怪我が無いのが一番です。怪我をしたときのことを想定するのも大切ですが、怪我をしないように充分に安全に注意をしながら作業を行うことがもっと大切です。安全第1です。

真剣に受講しています その1
真剣に受講しています その2
(真剣に受講しています)
実際に処置の方法を体験します
(実際に処置の方法を体験します)

7月7日(木)

(天候:曇・最大瞬間風速:7.7m/s・気温(最高:-13.5℃ 最低:-17.3℃))

 午前9時、旭川高専とTV会議システムを使った南極からの授業が行なわれ、専攻課程の約20人の生徒と野球部員(学校では野球部監督ですので)10名程度が参加して行なわれました。今回はいつもの食堂からの中継ではなく庶務室からということになっていましたので、私の背中越しに授業が行なわれ、90分間の授業。さすが!と思わせるような内容と語りかけるような口調で私も引き込まれるように聞いていました。

授業風景 その1
授業風景 その2
(授業風景ですが、こぢんまりと行なわれています)
授業風景 その3
(受講している学生も真剣に聞いています)

 またビデオカメラで庶務室の様子や、窓から見える外の様子や以前撮影したブリザードの様子が画面に映し出されると、食い入るように見ていました。やはり映像、特にリアルタイムのものは、こちらの様子が一目で理解してもらえますので、非常に効果的で関心を引きます。
 今後、ビデオカメラを更に活用し、自由に基地の内部や外部の建物、景色を生中継で紹介するような環境が整うと、もっと素晴らしく効果的に映像を伝えることができます。特にオーロラのリアルタイムの映像などは更なる感動を伝えることが出来、より南極の素晴らしさも伝えることができると思います。 
 多分、近い将来このようになっていくんでしょうね・・・でも、余りにも昭和基地が身近になりすぎてしまい、錯覚を起こしがちになりますが、日本からの約14,000kmの距離は変えることが出来ませんし、物資補給は1年間無く、この基地には越冬隊員しか居なく、そして自然化環境は100年前と全く変わっていないところということを忘れてはいけません。
 そうです。ここは、69°00’S, 39°35’Eにある南極、昭和基地なのです。

7月8日(金)

(天候:曇・最大瞬間風速:8.6m/s・気温(最高:-15.3℃ 最低:-19.8℃))

 本日、早朝6時頃より慌ただしく隊員が動きだしていました。今日より4泊5日で、とっつき岬~S16へ出発。今回もS16地点にある大型雪上車(SM100)4台をとっつき岬まで運び車両と車載通信機器の整備をすることと、SM50ヒアブ(クレーン付)を昭和基地まで運び込む事、車載気象観測装置を持帰りこれも整備をするとう内容です。大型雪上車(SM100)は、まだ海氷上を走ることが出来ませんので、とっつき岬に持ってきての整備となるので、多少不便ではありますが、海氷がもし大型雪上車の重さ(約11トン)に耐えられず割れてしまったら非常に危険です。ルート上の全ての海氷厚が1M以上にならなければ走らせてはいけないことになっています。
 当然、昭和基地に運んで整備をしたほうが作業的には便利なのですが、そのために危険を冒すわけにはいきません。これも安全を第1優先にして作業をしなければなりませんのでいたしかたないと言ったところでしょうか・・・

いざ、出発です その1
いざ、出発です その2
(いざ、出発です。)

 このオペレーションで整備が終わった車両、ソリなどを使い、ドーム基地までの燃料、物資など大量に運ぶことになっています。ドーム基地まで片道約1,000キロを約1ヶ月程かかり到着することになっています。この長旅は、どんどん気温も下がり空気も薄くなるなど、条件は一層厳しくなっていくのです。 
 この厳しい条件の中で一番頼らなければならないと言うよりは、雪上車が故障してしまうともうどうにもならなくなります。ですから出発までに充分に整備をしてドーム旅行を万全の体制で迎えることになります。
 さて、昨日は「七夕」。管理棟食堂前に笹の木に似せたものをつくり、そこに隊員それぞれが願い、想いを記入した「短冊」をかけて七夕気分を味わいましたが、南極の夜空には「天の川」は見えるのですが、織姫、彦星が見ることができないとのことでしたが、まぁ~そんな細かいことは置いておいて南極昭和基地版の七夕をささやかながら行なったことの意義が大切なんです。

七夕ですなぁ~
(七夕ですなぁ~)

 その「短冊」を今日の夕食後に取り外し、ここ数日中に気象の気球に結び付けて南極の空に放つ予定になっています。みんなの願いを込めた短冊。南極の大空に解き放たれて全ての隊員の願いが叶うといいですね・・・
  もう一つ、大きな幸せな出来事が・・・気象隊員の一人に第一子(女の子)が誕生し、母子共に元気だそうです。でも、生まれたての子供に逢えないのが残念ですけどね・・・いずれにしてもお子さん誕生、おめでとうございます。

7月9日(土)

(天候:曇・最大瞬間風速:9.0m/s・気温(最高:-17.6℃ 最低:-20.5℃))

 今日は休日日課で5、6月と天候が悪く順延になっていたスポーツ大会が海氷上で開催されました。種目は「サッカーdeバトルロイヤル」。これは4つのゴールを作ったフィールドに、2つのボールを入れて4チームが同時に入り、相手の3つのゴールに蹴り込むルールでした。1チーム4人で16人が30M×35M程のフィールドの中で入り乱れていましたが、雪上サッカーですから足元が雪で埋まってしまい、ボールを自由にコントロールすることが出来ずに相当苦労していたようでした。そんな中、必死でボールを追いかけるものですから息が直ぐに上がってきて、最後は足が前に出なくなると言う症状があちらこちらで見受けられていました。足が雪で思うように動かなくなる雪上サッカーの経験はたぶん始めてで、相当しんどかったというのが感想でしょう。北海道では冬になると当たり前のようにやっていましたので、久しぶりの感覚に浸っていました・・・と言うのもほんの最初の1~2分だけで、あとは楽しさより苦しさが・・・久しぶりの外でのスポーツ、気温はマイナス15~6℃で風が多少あり、何もせずだまって立っていると手や足の先がしびれて来るくらいの寒さですがそんな中、ボールを必死で追いかけて爽快な?汗をかいた休日となりました。

(あちらこちらで転倒者が続出)
(最後は全員で)

7月10日(日)

(天候:曇時々ふぶき・最大瞬間風速:30.1m/s・気温(最高:-8.1℃ 最低:-17.7℃))

 今日は、6月18日以来(途中一度、庶務室から旭川高専への中継授業はありましたが)久しぶりに食堂を使用してのTV会議が調理隊員の出身の鹿児島県友愛学園と行なわれました。

多少、緊張気味?
(多少、緊張気味?)

 今回も気温、オーロラ、生物、食べ物などの質問があり担当隊員が答えていましたが、「涙は凍るの?」なんていう質問も・・・。
 またこちら側より南極に関する簡単な質問を日本側の子供たちに「○×」で答えてもらう企画も行なわれ、盛況の内に終了しました。私はと言うと、外の様子をビデオカメラで撮影する担当になりましたので、午前9時過ぎの外の様子(外灯の明かりで照らし出されている発電棟、観測棟)や、温度計を非常階段の鉄柱にくくりつけて現在の温度の状況などの撮影を行なっていましたが、風が多少強く気温もマイナス15度でしたので、目出し帽子、ゴーグル装着という完全装備で望んだのでしたが、それでも目出し帽子の上から吹き付ける強風は冷たかったなぁ~
 今回も子供たちに感動を与えることの出来たTV会議となったと確信しております。
 さて、何やら通路棟の一角にコンパネの壁がそそり立って、というより完全に垂直を超えている「壁」が出現したのです。単管パイプで頑丈に固定されたこの「壁」の正体はというと、「フリークライミング」用の壁だったのです。壁を傷めないように注意深く施行され、越冬交代前に撤去することになっています。通信隊員が余暇と訓練両方を兼ね備えた優れものとして持込んだのですが、ようやくその取り付ける壁が完成し、近々に「ロック」が取り付けられ完成することになっているそうです。この「フリークライミング」は人工的な道具を一切使わずに手と足のみで岩壁を登っていくのですが、当然、手の力(特に指の力)足の力、腹筋、背筋と身体全体をバランスよく使って登っていかなければなりません。

怪しげな「壁」です
(怪しげな「壁」です)

 もし、野外でクレバスに滑落して、自力で登っていかなければならなくなる状況が起きたときに、多少なりとも登り方、身体の使い方、壁の使い方など多くのことが役立つことになるでしょう。
 周りに人が居なく一人で必死にという状況はあまり想定はされませんが、もしやの時のために遊びながら技術も習得できるこのスポーツ。是非、私も挑戦して見たいと思います。(でも、体重が・・・)

7月11日(月)

(天候:曇時々晴・最大瞬間風速:28.1m/s・気温(最高:-10.6℃ 最低:-15.2℃))

 21時過ぎにオーロラ観測担当隊員から素晴らしいオーロラが出ていますとの連絡が入りました。磁気嵐が発生したためだそうで、明日以降も別な太陽活動によりオーロラが出る予想もされました。居住棟の玄関からのぞいてみると確かに出ています。夜空に揺ら揺らと羽衣のように揺らめいているオーロラが・・
 自分のカメラでは旨く撮影できないのでとにかく目に焼き付けることだと想い、しばらく夜空のSHOWを眺めていました。
 オーロラを見るたびに思うのですが、この感覚は実際に見なければダメです。カメラで撮影されたものも素晴らしいとは思いますが、カメラというフィルターを通してしまうと、何か他の被写体と同様に過去の物となってしまうような気がします。とは言っても実際に見ることができる人は限られてしまいますが、チャンスがあれば是非、実物を一度ご覧下さい。今までに感じ得た事のないような感動、感激を味わえることでしょう。(南極、北極以外でも見ることは可能です)

7月12日(火)

(天候:曇時々晴・最大瞬間風速:18.6m/s・気温(最高:-13.4℃ 最低:-16.9℃))

 今日は地学部門のとっつき岬に設置してある地震計のバッテリー交換作業を支援しました。
 朝8時過ぎ、まだ外は極夜のピークは過ぎたとはいえ、太陽が昇りませんので暗い中、ソリにバッテリー(1個25kgセンチ)を9個、その他の荷物を積み込みスノーモービル3台に5人がそれぞれ乗り込んで出発です。

まだ暗いです
(まだ暗いです)

 とっつき岬までの距離約20km、ルートはTEルート。気温はマイナス15℃、風はほとんど無し。先頭のスノーモービルに乗っている地学隊員がルート方位表とコンパス、ハンディGPSでポイントを一つ一つ確認しながら進みます。シュプールを探し、正確なルート上を走行するためと安全のために確実に進まなければなりません。
 またあらゆるところに「サスツルギ」が出来ており、かなりの段差がありますのでこれも出来るだけ避けながら進みます。
 また、防寒のための羽毛服などかなり着込んでいますので、覆われている部分はそれほど寒さは感じませんが、50分程度走行していますので、体温が徐々に奪われていきます。とくに直接風のあたる鼻先、頬などは寒さで痛みやしびれを感じます。この感覚を超え、皮膚の色が白っぽくなってくると「凍傷」になってしまいますので、凍傷にならないように鼻や頬を触ったりしながらで温かみを与えながら防ぐのです。
 そうこうしている間に、とっつき岬が視界に入ってきました。そこにはS16オペレーションで8日から8名ほどの先発隊が雪上車の整備で作業をしています。
 遠くから数台の雪上車のパトライトの点滅が、何か街の明かりのように感じたのは私だけでしょうか・・・
 その先発隊の雪上車のところに無事到着。しかし、昭和基地から20km程度しか離れていないのですが、風がかなり強く気温も強風のせいでもあるのでしょうか、かなり低く感じられます。
 そんな場所ですし、先ずは暖を取るために雪上車の中に駆け込みました。出発する前日、当日の朝共に連絡を入れていましたし、走行しながらも無線で連絡もしていましたので受け入れ態勢はバッチリです。
 作業していた隊員が作業を中断して「お疲れ~、寒くなかった~久しぶり~」などと声を掛けに来てくれたことにはうれしかったですし、彼らたちも5日ぶりに逢うわけですから懐かしかったのでしょう・・・
 昼食を雪上車の中で食べて作業開始です。地震計のセットされている場所は岩盤が露出しているために、スノーモービルもある程度しか近づけませんので、後は人力で25kgのバッテリーを運び込みます。足元は強風によって雪が吹っ飛んでしまって露岩がむき出し状態、一部雪が残っているところが凍りついている状況で非常に滑る中、バッテリーを運びます。どうにか全て持込んだ充電済みのバッテリーを交換。ということは古いバッテリーを持帰るということ?ですから今度は使用済みのバッテリーを持って坂を下ります。昇りより下りの方が危険ですからより慎重に運びます。全ての作業が終了したのが14時。予定通りの作業を終了してとっつき岬を出発し、15時少し前に基地に到着しました
 私たち設営系の隊員は観測系隊員の作業の支援を行ないます。これも重要な私たち設営の業務です。このように支援をしながら観測が滞らないようにしていくのです。

バッテリー交換中
太陽光パネルでも補助的な電源を確保します
(バッテリー交換中)
(太陽光パネルでも補助的な電源を確保します)
作業終了で、帰ります
(作業終了で、帰ります)

7月13日(木)

(天候:曇後晴・最大瞬間風速:14.2m/s・気温(最高:-9.9℃ 最低:-20.7℃))

 極夜が本日をもって終了しました。とは言っても太陽が地平線に横たわる雲に微妙に隠れてはっきりと見ることができません。今日は雲が無ければ約1時間程度太陽が見えることになっていたのですが・・・

微妙ですが、間違いなく太陽です
(微妙ですが、間違いなく太陽です)

 でも、日に日に確実に明るい時間が長くなってきています。極夜期は過ぎてみると思ったよりは明るく、6月21日のミッドウインターですら正午あたりの明るさは薄明るい感じで、新聞も簡単に読み取れる訳で「真っ暗」が一日中続くことはありませんでした。しかし13時を過ぎる頃から急激に暗くなり、14時過ぎは真っ暗になり次の日の正午頃にようやく薄明るくなる状態(極夜期)が本日までの42日間継続しました。何でも過ぎてみるとあっけなく感じるのですが、極夜期の間にミッドウインター祭という一大イベントの準備、本番で忙しく楽しく過ぎて行きましたので、42日間は暗くもありましたが、私にとって暗さを楽しさでカバーしきった42日間だったような気がします。(でも眠かったな~)
いずれにせよ極夜期が終わり野外作業が本格的になり季節も春に向かいますが、寒さのピークは8月だそうで春はまだまだといったところです。
 19時30分より「観測報告会」と称して各観測部門がどのような観測が行われているのか、また2月から今までの観測結果(成果)を発表して隊全体としての理解を深め、越冬後半の様々な観測計各をより円滑に行なうためにという趣旨で開催されました。一人約12分程度という短い時間の中での発表ですのでこの時間内にまとめるのが非常にみなさん苦労されていたようです。2回に分けて今日は前半ということで、気象、電離層、宙空(地磁気、オーロラ)気水圏(エアロゾル、ラドン、ドームふじ氷床コア)という題目を文字にしてみると非常に難しく感じますが、要点をまとめての発表でしたので意外?と理解できたかなぁ~なんて感じています。さすがにそれぞれが自分の専門分野となりますので専門用語なども時には入りますが、私のような初心者で理解できるようにと説明をされていました。改めて、世界的、地球的な規模の研究が多く感心し、さすが南極観測隊と思ったのは私だけでしょうか・・・

講師1
講師2
講師3
講師4
講師5
講師6
(講師の皆さんです)

7月14日(金)

(天候:曇後薄曇・最大瞬間風速:21.6m/s・気温(最高:-7.2℃ 最低:-13.7℃))
 久しぶりに今日は1日中、外作業の支援を行ないました。S16オペレーションでソリを持帰っており、ネスオイヤ海氷上地点にデポしてあるのですが、そのソリの整備作業を支援しました。この整備はボルトのまし締め、木枠の点検、交換が主なものです。これら整備するためにまずソリの中にある雪をかき出さなくてはなりません。このソリ、通称「2tソリ」と呼ばれ(ソリの重量ではなく約2トンまで積み込める。ちなみに重量は900kgセンチ)全長4.2m、幅1.6mとかなりの大きさですから、その中に溜まる雪の量は相当なものですし、雪そのものが非常に硬く締まっていますので、重量感があります。気温がマイナス15℃で幸いにも風が無かったのですが汗だくです。ソリ整備の前にややグロッキー気味にはなりましたが、何とか気象条件がいい時にやれるだけしておかないと外出が制限されるような悪天候がいつ来るかわかりませんので、とにかく出来る時には最大限行なうことが昭和基地での鉄則です。結局3台の整備が完了しましたが、まだ沢山残っていますので出来るだけ早く終了させなければなりません。

現場に向かいます
橇が置かれています
(現場に向かいます)
(橇が置かれています)
このように点検、修理が行われています その1
このように点検、修理が行われています その2
(このように点検、修理が行われています)

 午後からは先日行なわれたハンディGPSの取扱い講習が実際の海氷上のルートを使って行なわれました。1回目は管理棟食堂で基礎編を学びましたが、実際に野外で使用して操作方法、ポイントの出し方などより実践的な講習となりました。各ルートのポイントである竹竿の感覚は約500m程度ありなかなか肉眼では見えづらいためにGPSを補助的に使い正確に次のポイントに誘導してもらうのです。
  南極の天候はあっという間に変化します。ついさっきまで晴天であったものが急にブリザードとなることが良くあります。このような場合により正確に次のポイントを見つけなければなりません。GPSはこの誘導をしてくれる優れものですので充分に操作方法を理解しておかなければなりません。

実際に海氷上で行ないました その1
実際に海氷上で行ないました その2
(実際に海氷上で行ないました)

7月15日(金)

(天候:曇・最大瞬間風速:18.7m/s・気温(最高:-7.3℃ 最低:-12.7℃))

 13日の極夜明けから太陽がはっきり、スッキリとは見えません。毎回、低い位置にある薄い雲に邪魔をされ、かすかに見える程度です。昨日も低い位置にまたそれも太陽の昇る位置に意地悪しているかのように陣取っています。そのおかげでまたまた太陽がはっきりとは見えませんでしたが、12時45分頃にかすかに太陽が顔を出した程度で終わってしまいました。時間の問題でしょうがスッキリとした日の出を早く見たいものです。

すっきり見えないです・・・
(すっきり見えないです・・・)

 さて午後から、2回目の野外医療講習会が開催されました。まず内服薬、外用薬などの使用方法、利点、欠点の説明が行なわれました。次は注射の使用方法について医療担当隊員から説明があり静脈注射、筋肉注射などの具体的な説明の後に、実際のデモンストレーションが行なわれました。直接血管に入れる部分は初心者でも間単に出来るものになっており針自体もかなり細く、痛さもほとんど感じられないようなものでしたので、刺される側は痛みなどの感覚はほとんどなかったということです。
 このような注射を使用する状況は、薬を飲んだり包帯を巻いたりということよりは状況が悪い時が想定されます。いかにその時に落ち着いて適切な処置ができるかはこのような普段の訓練がなければ出来ません。野外にドクターが全て同行することは出来ませんので、そのための訓練なのです。
 このような状況にならないように処置も重要ですが、予防という安全には充分気をつけていかなければなりません。

真剣に受講してます
大丈夫?
(真剣に受講してます) 
(大丈夫?)

7月16日(土)

(天候:曇・最大瞬間風速:6.2m/s・気温(最高:-8.1℃ 最低:-17.6℃)
(日出:11:19 日没:13:38))

 今日午前8時30分過ぎ、S16オペレーション隊(11名)が出発しました。今回も4泊5日の日程で、S16地点でのソリの掘り出しを行い、昭和基地までの移動、雪上車搭載の無線機の整備を行ないます。また今回はH68地点に行き、そこに無人気象観測装置の設置を行います。
 このS16オペレーション。今後数回行なわれ整備を繰り返した後、8月中旬に予定されている中継点旅行、そして大イベントであるドームふじへの旅行に万全の体制で臨むことになります。あとは天候次第ですが、これが一番不安で、私たち人間の力ではどうにもなりません。何とかこのオペレーションが天候に恵まれたものになるように、そして無事終了するようにと願っています。
 また今回のオペレーションに参加している一隊員が、めでたく現地でそれも雪上車の中で誕生日を迎えることになりました。何やら出発の時にこっそりとケーキとシャンペンが本人にばれないようにと積み込まれたそうです。さぞかしビックリするでしょう。今回の誕生日は一生の思い出に残る記念すべき誕生日となるに違いないでしょう。
 今月のTV会議は札幌市、旭川市、朝日新聞東京本社での南極教室が計画されています。8月に入ると小中学校が夏休みに入るために相当数の予定がくまれているとのことです。8月は一番寒い時期なので、この寒さを旨く伝えられたり、日の出の時の朝焼けが素晴らしく綺麗ですから、この風景も見せることが出来たらとも思っています。
 このTV会議で、できるだけ多くの子供たちにできるだけ多くのことを理解してもらうように工夫をこらしながら頑張りたいと思っています。

7月17日(日)

(天候:晴・最大瞬間風速:1.3m/s・気温(最高:-19.7℃ 最低:-20.7℃)
(日出:11:26 日没:13:38))

 本日は休日日課。朝から天候も穏やかで朝日も(日の出が11:19分ですけど・・・)鮮やかに昇ってきていました。このように風も無く天候が良く、程ほどに気温が低い(マイナス20℃くらい)となると水平線上に蜃気楼が現れます。見事に氷山が縦長の妙な型になって見えました。以前もこのような条件の時に見ることができたのですが今回は見たという隊員からの情報でした。あしからず・・・

蜃気楼です。氷山が縦長に見えます
(蜃気楼です。氷山が縦長に見えます)

 さてS16オペレーションチームの作業が天候に恵まれ計画以上に進んでいるという連絡が入り、この進捗状況だと1日前倒しで帰ることが出来そうだということです。雪の中に埋まっている2トンソリを何と19台もすでに掘り出したらしく、11名の精鋭部隊ですのでさすがと言うべきでしょう。

神業的なブルドーザー操作技術 その1
神業的なブルドーザー操作技術 その2
(神業的なブルドーザー操作技術で次々に掘り起こしています)

 毎日定時交信が20時に行われていますが、その中で今回初めてS16地点に行った隊員から感想を聞いたところ、周りを見渡すとそれぞれの地平線おりおりの色が紫、緑、黄色と異なって見えるなど、風景に感動したという感想があったり、S16地点はとにかく何も無いところで昭和基地が都会に感じるなんていう感想もあったと通信担当隊員から聞きました。(これも聞いた情報ですいません)
 私もまだS16地点には行った事がありませんので、近いうちにいかなければと思っていますが、できれば今回のような天候がいい日になると嬉しいんですが、さてどうなるでしょうか・・・・

H68地点から見えた夕焼け
(H68地点から見えた夕焼け)

 以前紹介したクライミング用の板に「ホールド」が建築担当隊員によって取り付けられました。内緒で登ってみましたが「ホールド」が意外に小さくほんの指先しかひっかからないものがほとんどで、当然上腕の筋力は必要ですが指の力(特に第1関節)に最も力が入りますし、足の親指も意外と重要になってきます。トータル的なバランス、柔軟性がこのクライミングボードを制することになるようです。

完成したクライミングボードです
(完成したクライミングボードです)

7月18日(月)

(天候:薄曇時々晴・最大瞬間風速:5.4m/s・気温(最高:-12.3℃ 最低:-21.0℃)
(日出:11:19 日没:13:38))

 今日は朝からネスオイヤ西側の海氷上に整然とデポしてある2トンソリの整備作業を再び支援。気温はマイナス18℃程度でしたが、風も無く穏やかな天候でしたので、気温ほど寒さは感じませんでしたが、今日の作業はソリの下部にあるナットの増し締めでしたので、完全に海氷上に寝転んでの整備作業です。  
 最初はまだいいのですが、時間を経過するにつれ体温が低下していきますので、体温低下を避けるためにフルスピードでナットを締めていきます。ナット締めは約150箇所程度行ないますので、自然と身体が温まっていきます。
 この作業をしている、ナットの緩みや木材のひび割れ、へこみなどの傷みがいたるところにあり、今までの内陸旅行の軌跡等を想像することが出来ます。ドームふじ基地までの往復約2,000キロの旅、どれほど壮絶かと言うことを・・この点検が終了する頃に再び内陸旅行へと出発するのです。

ひび割れ、補修の後がかなりあります その1
ひび割れ、補修の後がかなりあります その2
(ひび割れ、補修の後がかなりあります)

 S16オペレーションチームとの20時からの定時交信で、既に今回の予定していた作業は終了したとのこと。ソリはS16地点に雪に埋もれていた26台全てを掘り出し、持帰るようにソリの編成作業も終了。明日午前9時に、予定を一日繰り上げて出発するとのことでした。なんと見事なオペレーションチーム!敬服しました。後は事故無く帰ってきて下さい。

7月19日(火)

(天候:曇一時晴・最大瞬間風速:7.7m/s・気温(最高:-12.6℃ 最低:-17.6℃)
(日出:11:12 日没:13:45))

 16時過ぎにS16オペレーションチームが無事帰ってきました。3泊4日のオペレーションをやりきっての帰着。多少の疲労は当然ありますが、それぞれの隊員の表情には満足感、充実感があふれています。それぞれの隊員がそれぞれの業務をきっちりやりきった成果の現れです。4泊5日で当初は作業工程を計画していましたので、それを3泊4日で終了するということは、当然1日あたりの作業量は計画以上のことをしているのですが、いつ天候が崩れるかという不安と共に行っていますので、できる時にどれだけ多くのことをこなすかということを確実に実行したものと思います。頭で思っていても、そう簡単には実行できませんが、それを実行して結果を意図も簡単に出してしまうのですからさすがです。チームワークの結晶です。「ナイス、オペレーション!」と言う言葉がぴったりです!!本当にお疲れ様でした!

沢山の橇を引いて帰ってきます
(沢山の橇を引いて帰ってきます)

 昨日から昭和基地の火災報知機の点検が行われています。最初は点検のことをすっかり忘れていて一瞬、火災だぁ~と反射的に通信室(本部)に行きかけたというより行ってしまったのでした(まだまだ反射神経は鈍ってないな・・・)
 その後は点検と知りながらも火報の音が鳴るたびに「ビクッ!!」となりますが、さてこの時に本物の火災が発生したらどうやって聞き分けるのかなぁ~なんていう疑問も・・・点検ですからほんの一瞬の火報の音ですからちゃんと聞いていれば解るんですけど。この点検は昭和基地の各観測棟を始めとしてほとんどが設置されていますので全てを対象に点検が行われます。いざ、火災が発生した時に火報がならなかったら一大事と言うよりは如何に早く現場に駆けつけ初期消火が基本です。火報で一斉に動き出しますので、重要な点検の一つとなっています。

一つ一つ点検していきます その1
一つ一つ点検していきます その2
一つ一つ点検していきます その3
(一つ一つ点検していきます)

7月20日(水)

(天候:晴・最大瞬間風速:20.1m/s・気温(最高:-13.2℃ 最低:-15.5℃)
(日出:11:06 日没:13:51))

 今日の12時30分よりTV会議システムを利用して47次隊との顔合わせが行なわれました。
 47次隊とはすでにメール等でそれぞれの担当者同士ではやり取りが行なわれていましたが、ほとんどの隊員同士がお互いに顔を確認し合うのが初めてですので最初はお互いに緊張があり、ぎこちなかったですが・・・一人ひとりの自己紹介をまず47次隊より始め、次に46次隊が行ないましたがどんどん緊張感が取れ始め、全員が終了する頃には和やかな雰囲気になっていました。
 これから47次隊が出発する直前まで数多くメールや電話などでの連絡を取り合うことになりますが、この顔合わせでよりスムーズな連絡が行われることになるでしょう。
 47次隊の皆さんの顔を拝見して、「さあ~これからだぁ~、頑張るぞぉ~」と言う感じがとてもよく現れ、丁度、1年前の自分を思い出しました。私たちも45次隊との顔合わせをした時に、さすが越冬隊と思えるくらいの雰囲気が感じられたのですが、さて47次隊の皆さんは私たちを見てどのような感じをもったのでしょうか・・・。

初対面にお互いに緊張気味?
(初対面にお互いに緊張気味?)

 さて、今月も残り10日。そろそろ月末の定例会議の準備(資料収集)が始まり各部会、オペ会、全体会議が開催され、8月に突入します。
 それにしても時間の経過は日を追うごとに早くなっていく気がしており、南極昭和基地での残された時間は刻一刻と減っていきます。その残された貴重な時間を後悔の無い様に過ごしていかなければとも思っています。

7月21日(木)

(天候:曇時々雪一時晴・最大瞬間風速:18.8m/s・気温(最高:-14.9℃ 最低:-27.1℃) (日出:11:00 日没:13:57))

 今日の午後から気温がどんどん下がり、18時41分にマイナス27.1℃を記録しました。ようやく南極らしさが出できたところでしょうか・・・明日の天候は晴で、放射冷却現象が起こりもう少し気温が下がりそうです。明日は札幌市とのTV会議が昭和時間の13時45分からありますので、できれば気温がマイナス30℃程度になって南極らしい気温をお届けできればと思っています。
 こちらが正午過ぎの明るい時間に中継を行なうのは最近では珍しく、管理棟周辺の様子(氷山、太陽など)が綺麗に映し出される時間帯なのでより感動を与えられると思います。ブリザードのような天候も南極らしいのですが、札幌市の子供たちはふぶきなど見慣れていますので、それよりはこのような映像がより新鮮かと思います。天気予報では大丈夫そうなのでいいTV会議になりそうです。

7月22日(金)

(天候:快晴・最大瞬間風速:7.7m/s・気温(最高:-21.6℃ 最低:-30.8℃)
(日出:10:54 日没:14:03))

 今日は朝から気温が下がり、札幌市とのTV会議中継が開始される時点(13時45分)でマイナス28℃に達していましたので、南極らしい気温になってくれて先ずはひと安心。
 また天候も、風も無く快晴に近い素晴らしい天候でしたので基地の周辺がはっきりと綺麗な状態で紹介することもできましたし、丁度タイミングよく係留気球でのエアロゾル観測も行われていましたので基地周辺の撮影時に一緒に映すことも出来ました。その他にも気温がマイナス30℃近い状態で、コップに入っている「お湯」を空中に撒くと、まるで一瞬にしてお湯が凍ったかのように真っ白い煙状になる様子も紹介することが出来ました。このように中継時間が昼間の時間(昭和基地)であればより昭和基地周辺の様々な様子を伝えることができます。今日のTV会議中継は良かったと自画自賛しています。
 昨日のミーティングで、明日(22日)に定例の消火訓練を行うとの連絡がありました。午前11時02分に火報が鳴り響き、本部に駆けつけ出火場所の確認をすると「第2夏宿」からの発報。この場所は管理棟から遠隔地扱いとなる場所で700~800mの距離があります。このような遠隔地での出火はまず、一定の場所(今回は防火区画C)に集合し、その地点で人員確認を行い次の指示を待つということになっています。遠隔地の場合は、管理棟からの消火ホースが届かない為、初期消火(消火器での消火)が全てになります。現場指揮者等数名が先ず現場に駆けつけ状況を報告後に初期消火に入り、その後の状況で応援の指示を出す体制にはなっていますがこのあたりの具体的な行動にも多少問題が見つかりましたので今後の課題として解決しなくてはなりません。
 いずれにしてもいかにすばやく初期消火を行なうかがこの遠隔地火災でのキーポイントになるのです。

7月23日(土)

(天候:曇・最大瞬間風速:8.9m/s・気温(最高:-10.6℃ 最低:-29.8℃)
(日出:10:48 日没:14:09))

 いつもBARなどであたりまえのように使用している「氷」。これは氷山氷で基地周辺の綺麗な氷山をつるはし等で砕いてダンボールに入れて基地内の冷凍庫に保管しているものです。今使用しているものは45次隊の在庫でしたが、いよいよこの在庫が無くなりそうになっていましたので今日の午前中にBAR係長他数名で、ちょうどラドン観測装置のバッテリー交換作業が有りましたのでこれに併せて「アイスオペレーション」(間単にいうと氷採りです)が行なわれました。
 ラドン観測ポイント付近で程度の良さそうな氷山が無くラングホブデ方面にかなり行ったところに素晴らしい氷山を発見。
  氷山は普段、崩落の危険性や周りにタイドクラックがあり、危険である可能性が高いので近づかないようにとのことですが、9月中~下旬に公用氷の採取(本物のアイスオペレーション)がありますのでその練習といったところでしょうか。
 この氷山、写真で見る限りにおいてはかなりの大きいテーブル状の氷山です。いつの時代から海の上を漂っているのかは全く不明です。もしかすると数百年前からなのか、もしかしたら数千年、数万年前からあるのかは解りませんがそんな時代のロマンを閉じ込めた氷でお酒が飲めるなんてとても神秘的な気がします。
 「プチ、プチ、プチ・・・」と氷の中に閉じ込められていたその時代の空気がアルコールによって今の時代へと甦ります。もしかすると、その時代の匂いが感じられるかも・・・

氷山 その1
氷山 その2
(後ろの氷山、とてもBig)

 今日は二ヶ月に一度、開催される「居酒屋」、「寿司屋」の営業が行なわれました。
 居酒屋は毎回5~6名の隊員が郷土料理、家庭料理などからから得意な一品を選んで料理を作ってくれます。今回はブイヤベース、ソーミンチャンプルー、シューマイ、のっぺ汁、ジャガイモのそぼろ煮、竹輪の磯辺揚げが作られており、どれも手作りの味でとてもおいしゅうございました。
 また、寿司屋は毎回店員が交代で調理隊員の手伝いをします。最初はなかなか旨く握ることが出来ないのですがコツをつかみ出すとそれらしいお寿司になってきます。ネタとシャリが程よいバランスで見た目も味も最高でした。一瞬、ここは何処?なんて錯覚になるくらいの見事なお寿司でした。

担当者が仕込みしてます
旨い!!
(担当者が仕込みしてます)
(旨い!!)
お見事!!
様になってます
(お見事!!)
(様になってます)

7月24日(日)

(天候:吹雪後時々曇一時晴・最大瞬間風速:24.8m/s・気温(最高:-8.8℃ 最低:-12.3℃)(日出:10:42 日没:14:15))

 今日は気象隊員の昨日の予報どおり7時過ぎに吹雪模様になり、外出注意令が発令。この悪天候のため、今日予定されていた野外研修(向岩方面)が中止となってしまいました。楽しみにしていた隊員の皆様、残念でしたが天候には勝てませんのでまたの機会をといったところでしょう。

外出禁止プレート
(このプレートが出るのは何回目?)

 さて、47次隊の動きが一段と本格化してきました。明日、五者連絡会議が開催されます。この五者とは(1)南極地域観測統合推進本部(文部科学省海洋地球課)、(2)防衛庁南極観測支援班、(3)しらせ、(4)南極地域観測隊、(5)極地研究所で構成され47次隊での観測実施計画の詳細について協議が行われるという会議です。観測隊はしらせの協力支援が無ければ成り立ちません。往復の物資輸送やヘリコプターオペレーション、夏オペレーションの作業支援は特に重要な位置づけになっていますのでお互い十分な協議調整が必要です。そのためこれらの打合せを出発までに2度開催しより詳細を詰めていくのです。
 その1回目がいよいよ明日開かれることで、より一層の準備が進んでいくことになるのです。

7月25日(月)

(天候:曇後時々雪・最大瞬間風速:15.4m/s・気温(最高:-8.2℃ 最低:-10.3℃)
(日出:10:37 日没:14:20))

 今日の夕食終了後に8月17日に出発予定の中継拠点旅行関係者のミーティングが行なわれました。
 この中継拠点旅行の大きな目的は、(1)ドームふじ旅行用のドラム缶燃料92本の輸送(2)ドームふじ航空隊用の航空燃料ドラム缶12本の輸送(3)積雪サンプリング、気象データーの収集(4)H100地点、みずほ基地、中継拠点無人磁力計のデーター回収となっています。旅行期間は9月25日までの40日間の長丁場。参加メンバーはリーダー(雪氷担当)、機械、気象等それぞれの担当総勢6名。使用する雪上車はSM100クラスが3台、そこに燃料、食料などを搭載した2トンソリをそれぞれ7台ずつ引いて行きます。46次隊としての初の大掛かりな旅行となりますので、ソリの編成方法、車両整備の内容、定時交信の注意事項などの詳細の意見交換が約2時間ほど行なわれていました。
 初めての大掛かりな旅行ですし、ドームふじ基地での掘削オペレーションの基礎となる重要なオペレーションですので、参加隊員間の意思疎通はもちろんのこと、それをバックアップする各関係者等、隊全体でサポートをしなければ成功しません。
 また、参加メンバーの中に2名は経験者が含まれています。この経験者の貴重な意見もまた重要になってきます。これも成功するためには欠かせないことです。
 これら全ての力を結集して成功させなければなりませんので、出発までに何度もミーティングを行って行きます。参加する関係者の顔がとても引き締まって凛々しく感じられたのは私だけでしょうか・・・

詳細を詰めていきます
(詳細を詰めていきます。)

7月26日(火)

(天候:ふぶき時々雪一時曇・最大瞬間風速:14.7m/s・気温(最高:-8.2℃ 最低:-10.9℃)(日出:10:32 日没:14:26))

 今日から月末恒例の会議づくし週間の始まりです。
 本日は、10時からの観測部会(熱心な質疑応答11時40分までかかりました・・・)、13時からの設営部会(こちらは意外と早く1時間弱で終了)、19時からは生活部会(生活主任の見事な仕切であっさり?と15分程度で終了)と一日中会議の日。

観測部会
設営部会
(観測部会です)
(設営部会です)
生活部会
(生活部会です)

 それぞれの会議で今月の観測・活動報告、来月の観測・活動予定が各部門それぞれから報告されます。とくに観測部会ではそれぞれの観測部門の一カ月の成果発表が加わることがあるので報告する担当隊員も力が入ります。その他に部門を越えたり、設営系の作業支援を要するものもありますのでより具体的な説明もあります。またそれぞれの観測で部門間に関連するところもありますのでそれに関しての質問等も活発に行なわれていました。
 また、設営部会の方は基本的には施設、設備の保守点検の繰り返し作業が主なものになりますのでこちらは粛々と一つ一つ確実にこなしていくことが中心となりますので、説明資料のとおりとなることが多いです。ですから観測部会とは多少異なる内容の部会となるわけです。
 生活部会は、それぞれの生活諸係での活動内容で、業務が終了してから特に夜間の活動や休日を使っての活動ですが、かなり一生懸命活動をしています。この生活係が行なっている活動が生活の中でのオアシス的な役割を担っていることは確かです。例えば、ビデオ・映画係などは夕食後の時間に連続ドラマの放送や毎週金曜日にスクリーンを使用しての映画会(金曜ロードしょうわ)なるものを開催したり、この時に合わせてソフトクリーム係がソフトクリームを作成し隊員に喜ばれています。また、BAR係は毎週火・木・土曜日の21時より23時までBARを開店させ、多い時では隊員の半数以上が集まることもしばしば。
 農協は新鮮な野菜を提供し、漁協も新鮮な魚を釣ってきて提供したりでこれも大いに喜ばれています。
 このようにそれぞれの隊員が複数の係に所属して空き時間をうまく使いながら隊全体の生活面のサポーをし、また役立つような活動を楽しそうにしているのです。

7月27日(水)

(天候:雪後ふぶき・最大瞬間風速:17.4m/s・気温(最高:-10.9℃ 最低:-14.0℃)
(日出:10:26 日没:14:31))

 今日は地元といってもいい旭川市の科学館とTV会議中継が行なわれました。総合司会は旭川高専の教員である隊員が勤めました。当然、「先生」といわれていますので格調高き中継だろうと思いきやペンギンの着ぐるみで登場。基地側の回答する隊員も申し合わせたように(申し合わせていたんですけど・・・)ペンギンの着ぐるみで回答。このあたり、子供たちを面白く引き込むかという深い研究成果の表れとでもいいましょうか、ただの受けを狙うとは全くの大違い。(と思っていますが)この辺もさすがといえる演出でしょう。約1時間の中継を行なったのですが、やはり私が普段から一目おく存在です(かなり影響を受けているのですが)ので一つ一つの言葉のやり取りに意味がありなんともいえない味を感じさせてくれます。
さすがと思わせる内容でした。

怪しげなペンギン2匹が居ます その1
怪しげなペンギン2匹が居ます その2
(怪しげなペンギン2匹が居ます)

 夕食後のミーティング終了後には、2回目の観測報告会が開催されました。今回もそれぞれの観測部門でのこれまでの成果の速報、予定している観測内容の説明、が行なわれました。今回は地学系(堆積物採取、地球物理、海底地下水)、衛星受信関係、医学系、最後に越冬隊長の専門であるペンギンの個体調査に関することが話されました。短時間で旨くまとめて、かつ我々のような素人に解りやすく説明をするのはとても大変だったかとは思いますが、このあたりはさすがと思わせる内容になっていました。最後に観測主任(この観測報告会を取りまとめ役です)が「観測部門について目的、意義そして越冬後半の計画や狙い、さらには問題点について発表し、それに対しての質疑応答を通じお互いに理解が深まったことが出来たのではないでしょうか。またこれをきっかけに後半戦の円滑な観測活動、より良い成果そしてより楽しく意義深い越冬の一助となればと思っています。」という言葉がこの報告会の目的全てが網羅されているのではないかという最後のまとめがとても印象的な報告会となりました。

講師の皆さんです その1
講師の皆さんです その2
講師の皆さんです その3
講師の皆さんです その4
講師の皆さんです その5
講師の皆さんです その6
(講師の皆さんです)

7月28日(木)

(天候:ふぶき・最大瞬間風速:17.9m/s・気温(最高:-13.2℃ 最低:-14.8℃)
(日出:10:21 日没:14:36))

 今日は、全体会議前の恒例のオペレーション会議が開催され、来月の予定などが審議されました。特に8月は野外活動(宿泊を伴なうもの)が目白押しです。それらの日程調整や派遣隊員の調整をオペ会で行なうわけですが、中継拠点旅行(40日間)と圧雪滑走路造成実験(10日間)で総勢11名、ルート工作(6日間)5名、充電旅行(2日)で4名となっています。隊員が重複しないようにまた、偏らないように調整を行なうのも一苦労です。

真剣に討論するオペ会です
(真剣に討論するオペ会です)

 その40日間の旅行となると食料がこれまた大変です。参加メンバーは2月の越冬開始直後からこの中継点旅行の分と、10月中旬に出発するドームふじ旅行隊の分をこつこつレーション(真空パックに入れて冷凍させる)にしていました。これを冷凍庫から運び出し通路一杯に並べ、肉、魚、どんぶり物、その他という種類を一晩分とし、これを4日間分を一まとめにして40日間分で合計10箱のダンボールが出来上がりました。ちなみにこれは夕食のみでその他に朝食、昼食、中間食それぞれ同じように準備します。そうするとダンボールが40箱出来上がるわけで、その他に飲み物もありますので相当な量になります。
 7人で40日間の旅行でこれだけの量の食料ですから、ドーム用の食料となると14~5名、約3ヶ月分ですから気の遠くなるような食料になります。これもいずれ近いうちに用意することになります。(一体何箱のダンボールが出来上がるのでしょうか・・・)

綺麗に並べられています
(綺麗に並べられています)

 また、今日は恒例の誕生会が開催。6月生まれが1名でしたので7月生まれの3人とあわせての開催で、今回は立食パーティー形式で行なわれました。
 この誕生会に使用するケーキを前日の遅い時間までかかって作っていた喫茶係の皆さん、そして毎回美味しい料理を出してくれる2名の調理担当隊員。いつもありがとうございます。今回も楽しい素晴らしい誕生会となりました。

調理隊員と喫茶担当の隊員です その1
調理隊員と喫茶担当の隊員です その2
調理隊員と喫茶担当の隊員です その3
(調理隊員と喫茶担当の隊員です)
美味しかったですよぉ~ その1
美味しかったですよぉ~ その2
美味しかったですよぉ~ その3
(美味しかったですよぉ~)

7月29日(金)

(天候:雪時々ふぶき・最大瞬間風速:13.7m/s・気温(最高:-13.2℃ 最低:-15.8℃) (日出:10:16 日没:14:41))

 着々とドーム旅行隊の準備が進んでいます。その一環として13時より高所障害についての概要、注意点、対処方法の講習が行われました。
 ドームふじ基地は、3810mという高所に位置しているために初めて行く隊員にとっては未知の世界です。このような高度のあるところにつきものなのが高山病です。この高山病は2000Mを超える高さの場所ですと、殆どの人が程度は別にしてかかるそうです。初期症状は頭痛、疲労感が主なものらしいのですが中には激しい頭痛、嘔吐が起こり脳浮腫、肺浮腫になって命を落とすというくらいで、初期症状を無視すると非常に危険性があります。特にドームふじ基地は実際の高さより極地特有の気圧の低さ(日本だと4200m程度と同じくらい)という条件のところに位置していますので、より高度障害(いわゆる高山病)になる可能性があります。ですから、その対処方法を知っておきませんと大変なことに。このような概要説明も有りましたので受講する対象隊員も真剣です。もしこの高度障害になってしまったら、どのように対処治療するのかについては実際にドーム隊の医療器具として持っていくことになっているガモウバック(簡易型加圧装置)の使用方法を学んだのです。実際に隊員にこの中に入ってもらい、足踏みポンプで空気を送り込んで袋の中の気圧を強制的に上げた状態を経験してもらいました。(実際に治療するとなると6~8時間継続して入っていなければならないそうですが・・・)過去からこのバックは持込んでいるらしいのですが、使用実績は幸いにも無いということらしいとも言っていました。
 いずれにしても、4000m近い高所に行くわけですから様々な対処方法を事前に知っておかなければなりません。

簡易型加圧装置「ガモウバック」 その1
簡易型加圧装置「ガモウバック」 その2
簡易型加圧装置「ガモウバック」 その3
(簡易型加圧装置「ガモウバック」)

 また、ミシン担当係が中継拠点旅行隊員の羽毛服のフード部分へ毛皮を縫い付けていました。このフード用の毛皮はフィンランドのコヨーテのらしく、手触りは柔らかくて非常に暖かそうです。その毛皮を手縫いでひと針ひと針縫い付けています。ちなみに、このフード毛皮、グリーンランド単独横断を目指している隊員に聞いてみると、強い風を正面から受けてもこの毛皮がうまく風を吸収してくれて、直接顔面に風を受けるのをやわらげてくれるらしいということらしいです。これはエスキモーの生活の知恵らしいです。稚内でも冬になるとこのようなものを見ますが通称「アノラック」と呼ばれていたようですが、実はこのアノラックは「エスキモー語」から来ているそうです。
 こんなところにも野外活動をする隊員へ陰ながら支援をして協力をしているのです。

せっせと縫い付けています
(せっせと縫い付けています)

7月30日(土)

(天候:晴後曇一時雪・最大瞬間風速:11.4m/s・気温(最高:-12.8℃ 最低:-19.1℃) (日出:10:11 日没:14:46))

 今日は今月5回目のTV会議が朝日新聞本社(南極教室)と行なわれました。朝日新聞の会場には夏休みということもあり約100名近く来場しており、用意されていた席は満席状態。その中には45次隊、47次隊の皆さんも来ておられました。

昭和基地からでした~
(昭和基地からでした~)

 今回は、今までのTV会議の中で日本側の会場が非常に盛り上がっていたクイズをこちらから出題し、会場の皆さんに色つきの札で回答してもらうスタイルで行なわれたのでした。出題された問題は3問。一つは「海に浮かんでいる氷山をなめるとしょっぱい?」これは会場の答えが随分別れたのですが、実際に氷山氷を会場の子供たちに味見をしてもらいました。答えは「しょっぱくない」が正解なのですが、海に浮かんでいるのでしょっぱいものだろうと考えがちです。実際は、陸地から押し出された氷床が割れて海に浮かんでいるために味がないのです。これに関連して、それでは「海氷の味は?」という質問もしてみましたがこれも当然海水が凍ってできているものですから、しょっぱいというより塩辛いだろうと誰もが思うのですが、凍る時に塩分が海水に染み出していきながら海氷となっていくそうなので、思ったよりはしょっぱくないのですが、幾分塩分が残っていますので若干塩味がする程度です。これも実際に海氷を取ってきて私達が味見をするというスタイルですから、とても子供たちには解かりやすかったのではと思っています。
 次の問題は、「冷凍して持ってこない食料は、卵、こんにゃく?」これも実際に卵とこんにゃくを冷凍させたものを会場で触らせて比較させるということをしてから回答してもらったのですが、これも回答が分かれていました。答えは「こんにゃく」なのですが、こんにゃくの缶詰などというものが存在するのです。私も初めて見ました。(目からうろこです)

これが缶詰のこんにゃくです
(これが缶詰のこんにゃくです)

 第3問は、「昭和基地から日本の携帯電話にかけられるか?」これも回答は分かれていましたが、昭和基地から実際に会場にいる子供の携帯電話にかけてみたのですが、かかってきた子供はとても驚いていた様子が良く解りました。時間の関係でこの3問のみでしたが、子供たちは出題された問題を実際に目の前で試して見るということが非常に解りやすかったようです。いずれにしても、たった3問だったのですが「南極の不思議」を少しでも理解してくれたようですから、大成功のTV会議だったと思います。「百聞は一見にしかず」なんでしょうね。

7月31日(日)

(天候:曇時々雪後晴・最大瞬間風速:6.0m/s・気温(最高:-18.1℃ 最低:-30.6℃)
(日出:10:06 日没:14:51))

 今日は、久々に晴天に近い天候になり、気象隊員が日照計で日照を記録したのは4月24日以来となったとの報告がありました。以前にも紹介しましたが肉眼で確認は出来るのですが、日照計が測定する条件まで至っていなっかったわけで、ようやく測定できるほど日照が長く強くなってきた表れです。
 このようなすばらしい天候の中、野外研修が以前から企画をされていましたので、予定通り10時に雪上車2台を使い総勢9名の参加で出発をしました。行き先は「北島」というところで基地からは約10kmのところにある小さな島です。この北島、とっつき岬までのルート付近に位置しており、そのルート付近には大きな氷山も点在しています。この氷山の記念撮影も最高の天候の中で行なわれたということです。
 この野外研修の大きな目的は氷山群を間近に見ながら、北島で楽しくお弁当を食べて記念撮影ということなのですが、その他に雪上車運転の方法、ルート確認、基地周辺の地理的な把握等も目的でしたので、雪上車の運転も往復で交替して運転感覚を覚えたり、北島の位置、周りの状況など充分に確認できたことでしょう。このように野外研修でも目的意識を持って取り組むのがこの昭和基地での基本となっています。

(ビックな氷山です!
参加者でイェ~イ!
(ビックな氷山です!)
(参加者でイェ~イ!)
見事なサスツルギ(雪波)
(見事なサスツルギ(雪波))

 さて、今日のハイライトはなんと言ってもアンテナ島にあった旧式の雪上車の後片付けです。18台あったものを環境保全隊員を中心として天候を見ながらこつこつ移動作業をしてきたのですが、今日はその最後の旧式雪上車を無事移動することが出来ました。その記念すべき最後の18台目が15時過ぎ、海氷上をソリに乗せられ陸上に向かってきます。なんとその旧式雪上車には電飾や日の丸、万国旗等で飾られ、最終便にふさわしい派手な演出もなされていたのです。隊員全員がお出迎えです。
 これらデポされている雪上車を初めて見たときに、一体、どうやって動かすの?どうやって運び出すの?ほとんどの隊員がそう思ったに違いないこの雪上車。それが今日、最後の1台がソリに載せられ悠々と通過していく姿をだれが想像できたでしょうか。一番感動したのは環境保全担当隊員だったのではないかと思います。最後まで無事に事故無く運びきったという思いで迷子沢まで引っ張っていったことでしょう。きっと万感の思いで胸一杯だったと思います。本当にお疲れ様でした。

最後の1台です
見事に飾りつけられています
(最後の1台です。見事に飾りつけられています。)

 今日で7月も終わり。2月1日に越冬交代をして来年2月1日に越冬交代をするまでのちょうど半分、前半最後の日です。これからいよいよ後半に突入します。後半は47次隊に受入れ準備などでかなり忙しくなりそうです。あと半年のこの昭和基地での生活を充分に噛み締めながら過ごして行きたいと思います。

綺麗なPSCsです
(綺麗なPSCsです。)

第46次日本南極地域観測隊 越冬庶務 近江


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